CAFC判決

CAFC判決

FairWarning IP, LLC 対 Iatric Systems, Inc., 事件

2015-1985,2016,12,Fed. Cir. October 11, 2016

この判決は、特許クレームが、特許適格性を欠くと判断された一例を提供する。フェアウォーニング判決は、McRO判決とは異なり、アリス判決による要件を満たさなかったクレームは特許適格性を欠くと判断した。フェアウォーニング判決とMcRO判決において、特許適格性に関して異なる判断に至った理由に注意すべきである。

101条によりクレームが特許適格性を否定した判決

このフェアウォーニング(FairWarning)事件において、CAFCは、不正取得及び不正使用(misuse)を検知する方法及びシステムに関する特許について、35U.S.C.§101下の特許適格性を巡る問題を扱った。

地方裁判所は、この特許のクレームに記載された発明は、§101により特許対象とはならないと判断し訴えを棄却し、CAFCは地方裁判所のこの判決を支持した。

争点の特許は、ユーザが機密データへアクセスするパターンから異常なパターンを識別することにより、不正取得または不正使用を検知する発明である。明細書は、患者の保護されるべき医療情報(PHI:Protected Health Information)の利用がユーザによる不正取得を検知するシステム及び方法を記載する。

クレームに係るシステム及び方法は、デジタル状態で保存されているPHIへのユーザアクセスに関する監査ログデータ(audit log data)を記録し、あるルールでそのアクセスを解析し、解析により不正使用が検知された場合に通知を提供する。

フェアウォーニング(FairWarning IP, LLC)は、この特許に関してアイアトリック(Iatric Systems, Inc.)を特許侵害で提訴した。地方裁判所に対し、アイアトリックは、争点の特許発明の対象は§101により特許適格性がないと主張し、棄却を求めた。

一方、フェアウォーニングは、争点の特許の全てのクレームについて侵害を主張する訂正した訴状を提出し、アイアトリックは再び訴状の却下を要求した。

地方裁判所は、アイアトリックの申立を認め、連邦民事訴訟規則12(b)(6)に基づき、訴状を却下した。Alice Corp.対CLS Bank International事件(134 S. Ct. 2347 (2014))での2段階テストに従い、地方裁判所はまず、発明は「不審な行動を検知するために、人間の行為(human activity)の記録を解析する」という、特許適格性を欠く抽象的なアイディアに関すると判断したのである。

第2段階の分析において、地方裁判所は、この抽象的なアイディアを、特許適格性を有する概念に変性させるようなものがクレームにないと判断した。

控訴審において、CAFCもアリス事件の2段階テストを適用し、特許適格性を有する主題が争点の特許のクレームに記載されているかを審理した。

第1のステップに関して、CAFCは、争点の特許のクレームは、抽象的なアイディアに関するものであると判断し、争点の特許は、「不審な行動を検知するために、人間の行為(human activity)の記録を解析する」ことに関するものであるという地方裁判所の判断に同意した。

CAFCは、情報を収集しその解析結果を提示するもの、そしてそれ以上のことをしないものは抽象的なものであることを示した判例を指摘した。

CAFCは、争点の特許は、不正使用を検知するために情報を収集・解析し、そして不正使用が検知された場合に、ユーザに通知するという抽象的なアイディアに関すると判断した。

CAFCは、監査ログデータを解析するために少数な可能なルールのうち1つを記載する本件特許クレームを、同じくルールを記載するクレームに関する最近の判決、McRO, Inc.対Bandai Namco Games America Inc., No. 15-1080 (Fed. Cir. Sept. 13, 2016)判決(「McRo判決」)に対照した。

CAFCは、McRO事件におけるルールは、アーティスト(人間)により実行された従来の主観的なプロセスを、コンピュータ上で実行される数学的に自動化されたプロセスに変換したと述べた。そして、McROがそのクレームしたルールを既存のプロセスに導入したのであって、コンピュータを利用した結果で改善したのではないと説明した。

一方、CAFCは、フェアウォーニングのクレームは、古くからのプラクティスを、単に新しい環境において実施しているにすぎないと判断し、フェアウォーニングのクレームにおいて、既存の技術的プロセスを改善しているのは、クレームに記載のルールではなく、コンピュータを導入したことであると見抜いた。

また、CAFCは、フェアウォーニングのクレームは、CAFCがEnfish, LLC対Microsoft Corp.事件(822 F.3d 1327 (Fed. Cir. 2016))で、特許適格性を認めたクレームとは異なると述べた。なぜなら、Enfish事件におけるクレームは、具体的にコンピュータ・データベースのための自己整合性テーブルに関するものであったため、コンピュータで抽象的なアイディアを実行するのではなく、コンピュータが機能する仕方に対する具体的な改善方法に関するものである、とCAFCが説明した。

しかし、CAFCは、フェアウォーニングのクレームはそのような改善方法に関するものではないと判断した。

第2のステップに関して、CAFCは、個別に、そして組み合わせとしてクレーム要件を検討しても、クレーム要件は、クレームの対象である不正使用を検知するために情報を収集・解析し、そして不正使用が検知された場合に、ユーザに通知するという、抽象的なアイディアを、特許の対象となるもの(patent-eligible application)に変更するような「何かそれ以上のもの(something more)」を補足するようなものではないと判断した。

フェアウォーニングは、全てのクレームはコンピュータの環境特有の技術的な問題を解決するため、特許の対象となるものであると主張した。しかし、CAFCはその主張に反対し、本件のクレームは、コンピュータ・テクノロジーの分野に特有な問題に対する解決法、またはそのような問題を克服するものを提示していないとし、せいぜい、クレームは一般的なコンピュータにおいて実行できると述べた。

CAFCは、発明をコンピュータの分野に限定するだけで、その発明が特許の対象に変更されるものではないと判断した。

Key Point?この判決は、特許クレームが、特許適格性を欠くと判断された一例を提供する。フェアウォーニング判決は、McRO判決とは異なり、アリス判決による要件を満たさなかったクレームは特許適格性を欠くと判断した。フェアウォーニング判決とMcRO判決において、特許適格性に関して異なる判断に至った理由に注意すべきである。