CAFC判決

CAFC判決

ExcelStor Technology, Inc., et al. 対 Papst Licensing GmbH Co. KG事件

No. 2008-1140,2008,12,16-Sep-08

この事件では、事物管轄権を確立するためには、当事者の申立は特許法に基づいて生じている、もしくは特許法が当事者の申立の必須要素の1つでなくてはならないということが示されました。この事件はまた、もし特許法に関係する申立での唯一の争点が特許抗弁(例えば、特許権の消尽)であるならば、連邦裁判所に事物管轄権を与えるための十分な根拠はないことも示されました。

特許権に関連する確認訴訟の連邦問題の管轄権と申立の争点の特許法との関連性を扱った事件

この事件では、特許法が訴状の中で引用されているものの、申立自体は特許法の下で生じたものでなく、特許法は申立の必須要素でない事件において、連邦裁判所が事物管轄権を有するかどうかが判断された。

本事件において、コンピュータ製品の製造業者であるExcelStor Technology, Inc.、ExcelStor Technology, Ltd.、ExcelStor Group Ltd.、ExcelStor Great Wall Technology, Ltd.とShenzhen ExcelStor Technology Ltd.(以下、まとめてエクセルストール)は、2004年1月にパプスト(Papst Licensing GMBH & Co. KG)とライセンス契約を結んだ(以下、「エクセルストール契約」)。

このライセンス契約の中で、エクセルストールはパプストの特許されたハードディスクドライブ製造の許可と引き換えに、パプストにロイヤリティを支払った。

パプストは3ヶ月に1度、自社のハードディスクドライブに対し他社との間のライセンスに基づくロイヤリティについて、エクセルストールに通知することが義務づけられた。

2006年または2007年に、エクセルストールは株式会社日立製作所とパプストの間にライセンス契約が存在することを知った(以下、「日立契約」)。

エクセルストールの代理人は機密の日立契約書のコピーの入手を試みたが、パプストはエクセルストールに、エクセルストール契約を結んだ後に日立契約を結んでおり、日立はパプストにロイヤリティの支払いをしていないと伝えたとされる。

パプストはまた、ハードディスクドライブに関し第三者からはロイヤリティの支払いを全く受けていないとする通知書を3ヶ月に1度エクセルストールに送りつづけた。

エクセルストールはイリノイ州北部地方裁判所においてパプストに対し訴訟を起こし、双方の2004年1月のライセンス契約に関して詐欺行為と契約違反があったと主張した。

パプストは事物管轄権の欠如に基づき訴えを却下するよう申し立てたが、それに対し、エクセルストールは特許法を多数引用して訴状を修正した。

裁判において争点となっている訴訟原因のうち、第一の訴訟原因(訴因1)は、パプストが同じハードディスクドライブを2社に売って、その2社からロイヤリティを受け取っていたことによる「特許権の消尽の原則」違反であるとする確認判決の訴えである。

エクセルストールの訴因3は、それが「特許権の消尽の原則」違反であることをパプストが開示しなかったことに関係する詐欺行為の申し立てである。

訴因4は、パプストがエクセルストールに対しそれが「特許権の消尽の原則」違反であることを通知しなかったとする契約違反の申し立てである。

地方裁判所は、事物管轄権の欠如をもとにエクセルストールの申し立てを却下し、特許権の消尽は訴因ではなく侵害に対する抗弁であって、抗弁としての単なる特許法の引用は、その事件について事物管轄権を与えるには不十分であるとした。

地方裁判所はまた、訴因3及び4は特許法ではなく詐欺行為と契約法に基づくため、エクセルストールは連邦裁判所の管轄をもたないと判断した。CAFCはこの判決を支持した。

CAFCは合衆国法律集第1338(a)条第28項に基づき、地方裁判所は「特許に関する、連邦議会制定法のもと生じた民事裁判」に対して排他的な連邦レベルでの管轄権を有すると説明した。

CAFCは、合衆国法律集第1338(a)条第28項に準じて、特許事件につき連邦裁判所が管轄権を有するかどうかの決定に対する最高裁判所の判決を繰り返したのである(注1)。

判決は、第1338条に基づく管轄権は、訴えが特許法に起因する訴因をよく説明している場合、もしくは特許法が申し立てのうちの必須要素の1つであるといったような、原告の救済の権利が特許法の実質的な問題の解決に必然的に依存する場合の全ての事件に及ぶとした(注2)。

CAFCは、唯一関連する特許争点が申立に対する抗弁であるならば、その申立は特許法の「下で認められる」ものではないと説明し(注3)、特許権の消尽は訴因ではなく、むしろ侵害に対する抗弁であるので、エクセルストールの申立は特許法「下において認められる」ものでなく、ゆえに申立について裁判所は事物管轄権を有しないとした(注4)。

CAFCはまた、エクセルストールの侵害抗弁に対する単なる引用は、「特許法の実質的な問題の解決」を必要としないとし、ゆえに事件に対する連邦事物管轄権を与えることができなかったと認定した。

この事件は、連邦問題の管轄権を確立するためには、当事者の申立は特許法に基づいて生じている、もしくは特許法が当事者の申立の必須要素の1つでなくてはならないということを示しているので、重要な事件である。

この事件はまた、もし特許法に関係する申立での唯一の争点が特許抗弁(例えば、特許権の消尽)であるならば、連邦問題の管轄権を与えるに十分な根拠はないということも示した。