CAFC判決

CAFC判決

Evident Co. 対 Church & Dwight Co.事件

2005,8,2005年2月22日 CAFC判決

この事件のポイントはライセンシーが特許侵害で提訴したことに対する被告の反訴において第三者被告となったライセンサーには、反訴において勝訴した被告の弁護士費用を負担する連帯責任があることをCAFCは判決で示したところにあります。

訴訟における当事者適格と弁護士費用

2005年2月22日、CAFCは、Evident Corporation(以下、”Evident Corp.”)及びPeroxydent Group(以下、”Peroxydent”)は、Church & Dwight Co., Inc. 及び Colgate-Palmolive Co., Inc. (以下、合わせて「被告」)の弁護士費用を各自負担する連帯責任があるとした地方裁判所の判決を支持した。

1986年、歯磨き粉の成分に関する一部継続出願の発明者を含む6名の個人が、ニュージャージー州法に基づくパートナーシップ契約を締結してPeroxydentを設立した。

発明者等は彼等の特許権の全てをPeroxydentへ譲渡した。その直後、Peroxydentのうちの3名がニュージャージー州の会社法に基づいてEvident Corp.を設立した。

PeroxydentはEvident Corp.に対し、審査中の一部継続出願に特許が付与された場合について、侵害者を提訴する訴訟を拒否する権利を留保してライセンスを与えた。1990年11月、米国特許庁はUSP4,971,782として特許を発行した。

1997年6月、Evident Corp.は被告を782特許の侵害を理由に提訴したが、被告はPeroxydentを第三者の反訴被告として加えて、特許は無効であり、特許を侵害しておらず、また、不正行為により782特許は権利行使できないと主張し、確認判決を求めて反訴した。

地方裁判所は、発明者等が3つの重要な引例の存在に気付いていながら欺瞞の意図によりそれらの引例を開示しなかったことを理由に、782特許は権利行使できないと判決した。

地方裁判所は後に、この事件は例外的であると認定し、Evident Corp.及びPeroxydentに対し、被告の約130万ドルの弁護士費用を支払うよう命じた。

Evident corp.とPeroxydentはこの指令に対し、地方裁判所は当事者適格の考慮を欠いており、本件を例外的事件と認定したのは誤りであると主張し控訴した。

Peroxydentはさらに、裁判所が弁護士費用を各自連帯責任で負担すると判示したのは誤りであるという理由で控訴した。

まずCAFCはEvident Corp.及びPeroxydentの当事者適格に関する主張について審理した。この主張は控訴審の初回に提起されていたが、裁判所は、当事者適格は裁判管轄権があることを前提に審理しなければならない。

当事者適格を得るために、原告は(1)実際に損害を被ったこと、(2)損害と被告の行為との因果関係、及び(3)損害が裁判所の判決によって補償可能であるか、について立証しなければならない。

Evident Corp.及びPeroxydentは、Evident Corp.が単なるライセンシーであり、特許の実質的権利を全て持っておらず、特許に基づき提訴する当事者適格を持っていないこと、並びに、Peroxydentは訴訟に関心を持たない単なる受身的な第三者の反訴被告にすぎないことを理由に、被告らには反訴する当事者適格がないと主張した。

CAFCは、Evident Corp.は、独占的なライセンシーとして、特許侵害によって損害を被る立場であることから、明らかに提訴する当事者適格を持っていると判断した。

CAFCはさらに、第三者の被告としてのPeroxydentの存在によってEvident Corp.の当事者適格の要件は満たされていると認定した。

全ての侵害訴訟において特許権者が参加することの必要性の動機付けは、複数の訴訟と特許の無効を避け、あるいは特許権者の関与無しには権利行使不可と判決されないことを確実にすることにあり、最高裁の過去の判決に沿う要件をPeroxydentは満たしていると、その理由を述べた。

CAFCは、裁判が特許の存続を脅かすことや、Peroxydentが裁判の期間を通して参加していたことを理由に、Peroxydentの利益に影響があるという事実を指摘し、Peroxydentが訴訟と利害関係がなかったという主張も棄却した。

次にCAFCは、弁護士費用を認めるかどうか、つまり、事件が例外的であるかどうかについて審理した。

米国特許法第285条に基づき、裁判所は事件が「例外的」な場合に勝訴側の弁護士費用の支払いを認める。

CAFCは、事件が例外的であるか否かは、事実審裁判所に残された事実認定次第であるとした。

Peroxydentは争点の特許出願を出願していなかったが、特許付与される迄の十分な期間に特許権者として登録されていることから、USPTOに対し、積極的、継続的な情報開示義務があったと述べて、CAFCは地方裁判所による例外的事件に該当するとの認定を支持した。

3つの重要な引例を開示しなかったので、Peroxydentは開示義務を怠ったことになる。さらに、Peroxydentは裁判の殆ど当初から当事者となっており、裁判の全ての段階を通じてEvident Corp.と共に弁護士を雇っていた。

したがって、第三者の被告である特許権者のPeroxydentには弁護士費用を負担する連帯責任があるとした地方裁判所の認定は誤りではない、と判示した。

本件は、特許権者である第三者の被告には十分な当事者適格があることを認めた点で注目すべきである。

さらに本件は、第三者の被告の立場であるからといって、特許権者として特許権を失うことや弁護士費用を負担する責任から逃れられるものではないことを確認した判決である。

したがって特許権者は、単に第三者の被告として参加した場合であっても、権利を守りたければ積極的な役割を担わなければならない。