CAFC判決

CAFC判決

Epistar Corporation 対 International Trade Commission, et al事件

No. 2007-1457,2009,9,22-May-09

この事件で、CAFCは特許の有効性に異議を申し立てない条項(いわゆる不争条項)を含む和解契約は、その譲渡人が合意した範囲を超えて、譲受人の権利を制限することはないとの判断を示しました。また、米国際貿易委員会は、限定的排除命令(LEO)によって、被告以外の団体によって輸入された製品を排除できないことを明らかとしました。よって、被告以外の団体によって輸入された製品を排除するためには、一般的排除命令(GEO)が必要となります。

会社の合併に伴う和解契約の承継における不争条項の効果について

ルミレッズ(Philips Lumileds Lighting Company)は、「半導体素子におけるアクティブなLEDレイヤーの上に配置された特別な導電性がある透明なウィンドウレイヤー」をクレームした米国特許第5,008,718号(以下、718特許)の特許権を所有している。

718特許はルミレッズとエピスター(Epistar Corporation)との間の訴訟と同時にUEC (United Epitaxy Company)との間の訴訟の対象ともなっていた。

2001年に、ルミレッズは基材吸収型のLEDの製造、販売及び輸入に対して、718特許発明の使用権をUECに許諾し、UECは自身とその承継人に代わって、718特許の有効性に異議を申し立てないことに同意することで、ルミレッズとUECは、カリフォルニア州北部においてその事件について和解した。

2004年にエピスターとルミレッズもまた、同じ特許権に対する別のカリフォルニア州北部の事件について和解した。その事件もまた明確に基材吸収型LEDに関するものであった。

和解の一部として、ルミレッズはエピスターによる718特許の使用を認めた。エピスターは、ルミレッズが将来の侵害に対してエピスターを訴えない限り、ライセンスされた製品に関して718特許の有効性に異議を申し立てないことに同意した。

しかし、この契約ではライセンスされていない製品への言及がなかった。従って、UECの契約はエピスターの契約より限定的なものであった。

2005年11月4日に、ルミレッズはUECとエピスターの高輝度LEDとその製品による718特許の請求項1と6の特許権侵害を主張し、米国際貿易委員会(ITC)において、関税法第1337条の下UECとエピスターの双方を訴えた。この訴訟が起こされたわずか一ヵ月後に、エピスターとUECは合併した。

UECは消滅し、エピスターはUECの「資産、負債、契約上及び特許関係上の権利と義務、そして調査委員会のメンバーとしての地位」の全てを承継した。

ITCにおける過去の手続において、ルミレッズは、(1)エピスターが製造を続けているUEC製品、及び(2)エピスターが合併の前後において製造しており、UEC製品とは区別されるエピスター製品の保護のために718特許の無効性をエピスターが主張することは禁じられていたとして、略式判決を要求した。

ルミレッズは、ルミレッズとUECのあいだの和解契約における制約をエピスターは承継していると主張した。

行政法判事(ALJ)は、UEC同様エピスターは契約により718特許に対する無効抗弁を禁止されていたと認めた。エピスターは審査を求めたが、ITCはこの命令の審査を拒否した。ITCが審査を拒否した後、行政法判事はこの命令は争点となっている和解契約が二つ別々に存在することを考慮していなかったと認定した。しかし、裁判所はITCがすでにこの命令の審査を拒否しているため、主張は遅きに失し、命令の変更はできないと判決した。

契約の要請でCAFCはカリフォルニア州法の問題として、ITCによる和解契約の解釈を検討した。控訴審において、ルミレッズは718特許の有効性に異議を申し立てないことに合意した契約をUECが合併により免れるべきではないと主張した。

ルミレッズはさらに、エピスターとUECの合併によりエピスターはUECの和解契約を履行する義務があると主張した。CAFCは、契約法の原則では「例えばUECからエピスターへといったような譲受人への契約の譲渡は、義務の範囲ではなく、義務のある当事者のみの契約を変更する」と明言していると判断した。

CAFCは、エピスターはUECが合意したものだけを引き受けると判断した。CAFCは、エピスターは、ルミレッズと交渉した和解契約に準じて自身の権利を守る資格があると言及した。ゆえに、「エピスターによるUECの買収は、UECから買収した製品ラインに関係ないエピスターの権利を制限する効果を持たない。」

CAFCはまた、エピスターがITCの前でその事件について説明していないにもかかわらず、ITCの限定的排除命令(LEO)を破棄して差し戻した。

CAFCがKyocera Wireless Corp. 対 International Trade Commission事件(545 F.3d 1340 (Fed. Cir. 2008))においてその考えを公表したのはITCのLEOの後であった。判決は、ITCには、ITCにおいて被申立人として指定されていない団体によって輸入された製品を排除する権限がないと判決した。こうして、そのような製品を排除したITCのLEOは破棄された。

この事件は各々の和解契約の解釈にはカリフォルニア州法が適用されるにもかかわらず、契約の譲受人はその契約の下での本来の譲渡人の義務を超えた義務を負うことはないとする基本的契約法原則に基づくために、重要である。

従って、特許に関する適用可能な合意における法の選択にかかわらず、合併や似たような状況での譲受人の義務を限定するために、CAFCは定められた契約法の限定に注意を向ける。