IPRにおける公知例の範囲を画定するための「合理的な関連性」(reasonably pertinent)基準についての判断を示した判決。CAFCは、公知例が同一の技術分野に属しない場合、発明者が解決しようとする特定の課題に公知例が合理的に関連するものであるかを判断すべきであり、本件特許の課題と引用特許の課題は、当業者の観点から比較検討すべきであると指摘した。
IPRにおける公知例の範囲を画定するための「合理的な関連性」(reasonably pertinent)基準についての判断を示した判決
Pro Stage Gearは、電気ギターの音量調節用ペダルの支持板に関する特許(6,459,023)の特許権者である。Donner Technologyは、この特許についてのIPRを申請し、公知例としてMullen特許(3,504,311)を引用した。Mullen特許では、電気リレーを種々の制御回路に接続する配線するためのスペースを提供できるようにした支持材を開示していた。PTABは、Mullen特許が「類似の公知例」(analogous art)であることをDonnerが立証していないとして、対象クレームの新規性欠如の主張を退けた。DonnerはCAFCに控訴。CAFCは、PTABの判断に誤りがあるとして事案を差戻した。
CAFCは、公知例が類似であるかどうかの判断にあたり、二つの基準を適用した。(1)公知例が、発明者の解決しようとする課題とは無関係に同一の技術分野からのものであるか否か。(2)公知例が同一の技術分野に属しない場合、発明者が解決しようとする特定の課題に公知例が合理的に関連するものであるか否か―である。本件は、後者の基準に関するものである。CAFCは、本件特許とMullen特許が同一の技術分野にないことは明白であるとし、また、本件特許の課題とMullen特許の課題は、当業者の観点から比較検討すべきであるとした。審判部が、引例の相違点を数多く特定していることについて、引例は本件特許の類似技術であり得ること、類似する課題解決の観点から相違点をどのように関連づけるかについてPTABは説明していないことを指摘した。また、当業者のリレー技術の理解が不十分であったとのPTABの判断についても、引例のすべての詳細を完全には理解していなくても、引例の開示内容の課題解決に関連する部分について、有用な情報を収集するために十分な程度に理解できる限り、当該文献を参考にすることは合理的である、と指摘した。