CAFC判決

CAFC判決

Depuy Spine, Inc. 対 Medtronic Sofamor Danek, Inc.事件

No. 2008-1240,2009,9,1-Jun-09

この事件は、均等論に基づく侵害に対するensnarement defense(日本における自由技術の抗弁に相当)は、陪審団が取り扱うべき事実問題ではなく、裁判所が扱うべき法律問題であることことを明らかにしました。また、販促製品は逸失利益の算定に含めるべきではないことを明らかにしました。

均等侵害における自由技術の抗弁は事実問題か法律問題か販促製品は逸失利益の算定に含めるべきか

メドトロニック(Medtronic)は、マサチューセッツ地区地方裁判所の終局判決に対して控訴した。その判決は、均等論に基づく侵害に対するメドトロニックのensnarement defense(自由技術の抗弁)を却下し、DePuy Spine, Inc及びBiedermann Motech GmbH(以下、まとめて「デピュイ」と呼ぶ)に対する2億2630万ドルの逸失利益の損害賠償を認めるものであった。

CAFCは、この判決を支持したものの、逸失利益の一部が、特許製品と競合したり特許製品と共に機能したりはしない非特許の「販促(pull through)」製品に関する販売機会の逸失に基づいていたため、CAFCは損害賠償額を減額した。

ジョンソン・エンド・ジョンソンの一部門であるデピュイは、米国特許第5,207,678号(以下、678特許)を所有しており、脊髄手術で使用される多軸柄ねじについてメドトロニックのVertexモデルによる侵害を主張した。

前の控訴審で、CAFCは、文言上の侵害なしとする地方裁判所の略式判決を支持していた。しかし、CAFCは均等論に基づく侵害の争点について地方裁判所へ差し戻した。

差戻し審で、メドトロニックは、均等論に基づく侵害に対して「ensnarement」 defenseを持ち出した。「Ensnarementは、先行技術を包含する、即ち『ensnare』するであろう均等範囲を特許権者が主張することは禁止されるという抗弁である」

メドトロニックは、陪審団による決定ではなく、地方裁判所によるensnarement defenseに関する決定に対して控訴した。

メドトロニックはまた、地方裁判所の結論に対しても控訴した。その結論は、均等範囲を含むように請求項を書き換えることで作成した仮想の請求項が先行技術をensnareしない、即ち、メドトロニックが頼った先行技術は仮想の請求項の非自明性を否定するほどの先行技術ではない、というものであった。

CAFCはensnarementを審査経過禁反言になぞらえた。審査経過禁反言は伝統的に、ensnarementの適用に関する法的な制限であり、それゆえ、CAFCが判断すべき法律問題である。

CAFCの考えは、ensnarementに関する判断は「陪審団によるエレメント単位の均等の分析から分離かつ区別されるものであり、実際の請求項の有効性に影響を及ぼさない」というものであった。

次に、CAFCは、侵害被疑デバイスを文言上カバーする仮想の請求項を解釈することがensnarementの分析における最初のステップであると判断した。

2番目のステップは、仮想の請求項が先行技術に照らして特許性を有していないことを示すという義務を侵害被疑者が果たしたか否かを判断するために、侵害被疑者によって導入された先行技術をCAFCが評価することである。

そのような仮想の請求項が特許性を有さない場合、特許権者が均等範囲を広げすぎていたということであり、侵害被疑デバイスは法律問題として非侵害である。

仮想の請求項が侵害被疑デバイスを文言上カバーしているということについては、両当事者は同意していた。仮想の請求項は、「糸を通したシャフト部(3)を通過させる穴(8)を一端に持ち、かつ、前記ねじの頭(4)を受ける内部の窪んだ円錐形に形成された部分(9)を持つ受けチャンバ(7)」というフレーズを含んでいた。

仮想の請求項は、「円錐形に形成された」が実際の請求項の文言である「球状に形成された」を置き換られたということ以外は、実際の請求項と全く同じであった。メドトロニックは、米国特許第5,474,555号(以下、プーノ特許)及び米国特許第2,346,346号(以下、アンダーソン特許)によって仮想の請求項は§103の下で自明であると主張した。

メドトロニックは、「アンダーソン特許の圧縮材をプーノ特許のデバイス[圧縮材が欠けている]に追加すれば、仮想の請求項によってカバーされる堅くロックされた多軸柄ねじが得られるであろうということを、当業者であれば認識したであろう」ということをデピュイ自身の専門家が認めたという事実を重視した。

しかしながら、CAFCは、予見可能性は自明性の一部に過ぎないと付言し、また、KSR Int’l Co. v Teleflex Inc., 127 S. Ct. 1727, 1739-40 (2007)によれば、先行技術における複数のエレメントが物理的に組み合わせ可能であるという期待における予見可能な結果を発見し、その組み合わせが意図した目的のために機能するであろうという期待における予見可能な結果も発見した、と付言した。

デピュイは、プーノ特許及びアンダーソン特許の組み合わせはプーノの意図した目的のためには機能しないと主張した。

CAFCはこれに同意し、プーノ特許は、プーノ特許及びアンダーソン特許の組み合わせによって形成されるであろう堅いねじを阻害(teaches away)すると考えた。

プーノ特許は、「衝撃吸収」効果に対する一般的な嗜好を表現しており、また、「衝撃吸収」効果によって低減されるであろうとプーノ特許が述べている失敗に対する懸念も表現している。

CAFCはまた、プーノ特許の発明者による別の特許のうちの1つであって、堅さのレベルが異なるものをメドトロニックが引用したことを重視しなかった。

その発明者の別の特許における異なる堅さのレベルは、必ずしも、プーノ特許の意図する目的と同じことを目的としたものではなかった。

それゆえ、CAFCは、プーノ特許は仮想の請求項によって包含される堅い柄ねじを阻害しており、従って、仮想の請求項は自明にはならないと考えた。同時に行われた再審査において、特許庁は、再審査の下での全ての(実際の)請求項をプーノ特許及びアンダーソン特許に鑑みて変更無しに、特許を承認した。

CAFCは、陪審団による1億4910万ドルの逸失利益の認定も支持したが、デピュイの678特許製品の侵害被疑「販促」製品を顧客に販売することによって得られたであろうとデピュイが信じる7720万ドルの利益の陪審団による認定を覆した。

CAFCは、明確かつ明解な判例を引用して、逸失利益の目的となる「販促」製品は特許製品に機能的に組み込まれた非特許コンポーネントのみを包含するのであって、特許発明と競合もしないし特許製品と共に機能することもしない非特許アイテムではないと述べた。

デピュイは、自分の非特許製品はマーケティング関係の理由にのみ関連し、そうでない場合にはデピュイの非特許「販促」製品を購入しないかもしれない外科医に対する「とっかかり」の役割を果たすものであると認めた。

しかし、デピュイは、判例が「抱き合わせ(convoyed)」または組み合わせの販売に関するものであり、一方本件では製品が分離して販売されているという点で、自分の製品を既存の判例とは区別しようと試みた。CAFCは、この区別には相違が存在しないと考えた。

均等論に基づく侵害に対するensnarement defenseが(均等論の判断を通常扱う)陪審団ではなく裁判所が扱わなければならない判断事項であるということが明らかにされたので、この事件は重要である。

それゆえ、ensnarementについては、裁判所が(1)ensnarementのための仮想の請求項を判断し、(2)先行技術が仮想の請求項を自明のものとするか否かを判断する。判決はまた、「販促」製品は、それが被侵害特許製品に機能的に組み込まれている場合に限り逸失利益について考慮してよいという判例を繰り返した。