アリス(Alice)事件の第2ステップ(特許適格性への変換)の基準を判断した判決,この判決は、アリス事件の第2ステップの特許適格性に関するCAFCの判断基準を解説している。この判決は、裁判所が特許適格性のない抽象的概念と、特許適格性のある発明主題とを線引きをする際の重要な判断基準を示した。この判決から、CAFCが一般的なビジネスまたは商業関連のクレームとは対照的に、インターネットの使用に端を発する特許問題を重要と判断しているように思われる。
アリス(Alice)事件の第2ステップ(特許適格性への変換)の基準を判断した判決
DDR(DDR Holdings LLC)は、NLG(National Leisure Group Inc.)が米国特許第6,993,572号(572特許)および第7,818,399号(399特許)の特許権を侵害したと主張し、テキサス州西部地方裁判所へ提訴した。
これらの特許は、利用者がホスト・ウェブサイトに留まったまま、そのホスト・ウェブサイトの要素を備えた第三者の商用コンテンツを表示する、複合ウェブサイトを作るシステムおよび方法に関する。
審理の後、陪審員は両特許権に対するNLGの権利侵害、および特許を有効と認定した。それに続き、地方裁判所は、特許権非侵害および特許クレームを無効とする法律問題としての判決を求めたNLGの申立てを却下した。NLGは終局判決が裁判所に登録された後に控訴した。
控訴審においてCAFCは、地方裁判所が399特許に関する法律問題としての判決の申立てを却下したことについては支持したが、572特許に関しては判決を破棄した。つまり、CAFCは、572特許は法律問題としての審理を要すると判断したのである。
572特許は、利用者が第三者のウェブサイトを開くことなくそのウェブサイトのコンテンツにアクセスすることを許諾するシステムをクレームしている。
システムは、ホスト・ウェブサイトから「見て感じる(look and feel)」ための記載を含むデータを取得し、ホスト・ウェブサイトからの「見て感じる」要素を持つ複合ウェブサイトを作成する。
システムは、利用者が複合ウェブサイトから離れることなく他のウェブサイトのコンテンツにアクセスすることを許諾することにより、原則としてオペレーターがインターネット・トラフィックを維持することを許諾する。
訴訟当事者は、「見て感じる」というクレーム文言は、外観とウェブサイトを特定する全体の外観を伝えるユーザインターフェースに関する要素のセットを意味し、そのような要素には、ロゴ、色、ページレイアウト、ナビゲーションシステム、フレーム、マウスオーバーエフェクト、および、いくつかまたは全てのウェブサイトに共通する他の要素が含まれると解した。
控訴審においてCAFCは、Secure Sales System:SSS)の先行技術は明らかに全てのクレーム要素を開示していると認定し、SSSがホスト・ウェブサイトからその要素を取り出し、複合ウェブサイトへ取り込んだことを示す十分な証拠があったと述べた。
CAFCは、陪審員の判断には実質的証拠の裏付けがないと判断した。CAFCは、クレームは「見て感じる」要素のいくつかを複合ウェブサイトへ取り込むことを要件としているに過ぎず、要素が「全体的に一致」することや特定数の要素を要件としていない、と理由付けた。
したがって、CAFCは、被告の法律問題としての判決の申立てを棄却した地方裁判所の判決を取り消した。
NLGはさらに、特許法第101条に基づく不特許要件に関するものとして特許の無効を主張した。
CAFCは、572特許は既に無効と判断されていたので、399特許について審理した。その結果、CAFCは、399特許は第101条に基づき有効と判断した地方裁判所の判決を支持した。
CAFCはAlice Corp.対CLS Bank Int’l事件、134 S. Ct. 2347 (2014)において公表された101条に関する基準を適用した。
アリス事件のフレームワークに基づき、CAFCはまず、争点のコンピュータ実装クレームが不特許要件の抽象的概念に関するものかどうかを審理した。この問題についてCAFCは、クレームは、数学的アルゴリズム、あるいは根本的に経済的または長年に亘る商業的実施を言及していないと判断した。
抽象的概念の特性にかかわらず、クレームはアリス事件のフレームワークの第2ステップを満たしていると述べた。第2ステップは、そのクレームの持つ追加要件が、抽象的概念を特許適格性のある適用に変換しているか否かという設問である。
これに関し、CAFCは次のように説明した。その追加要件は、インターネット上の実施要件と共に、インターネットの世界が出現する以前から知られていた、あるビジネス手法の実施を単に述べているわけではないことから、特許適格性なしと判断された他の最新クレームとは異なる。
特にコンピュータ・ネットワークのアドレス体系において生じる問題を解決するために、クレームは必然的にコンピュータ技術に根差している。クレームは、ホスト・ウェブサイト上のリンクをクリックすることで、第三者のウェブサイトへ移動してしまうウェブサイトのビジターを、自サイト内に留めるという問題に対処するものである。
したがって、クレームはインターネット上で顧客の関心を支配し続けるという特許適格性のある有用性について述べているとCAFCは判断した。但し、インターネット中心の課題を解決することを目的とする全てのクレームの主題が、必ずしも特許適格性のある発明主題であるとは限らないと警告した。
Key Point?この判決は、アリス事件の第2ステップの特許適格性に関するCAFCの判断基準を解説している。この判決は、裁判所が特許適格性のない抽象的概念と、特許適格性のある発明主題とを線引きをする際の重要な判断基準を示した。この判決から、CAFCが一般的なビジネスまたは商業関連のクレームとは対照的に、インターネットの使用に端を発する特許問題を重要と判断しているように思われる。