CAFC判決

CAFC判決

Dana-Farber Cancer Institute, Inc. 対 Ono Pharmaceutical Co., et al. 事件

CAFC No. 2019-2050,2020,7,14-Jul-20

たとえ他の発明者より貢献度が低く、同時期に同じ場所で一緒に仕事をしていなくても、共同発明者としての要件は満たされるとした判決。CAFCは、共同発明者がたとえ他の発明者より貢献度が低くても、また同時期に同じ場所で一緒に作業をしていなくても、何らかの重要な観点で発明の着想や実施化に貢献していることが共同発明の必須要件であり、貢献の程度に関する明確な下限は存在しないと判示した。

たとえ他の発明者より貢献度が低く、同時期に同じ場所で一緒に仕事をしていなくても、共同発明者としての要件は満たされるとした判決

小野薬品工業は、T細胞のレセプター・リガンド相互作用(specific receptor-ligand interactions)を標的として抗体を投与する方法に関する6件の特許(7,595,048; 8,168,179; 8,728,474; 9,067,999 & 9,073,994)を保有する。これらの特許の発明者は本庶佑博士及び京都大学の研究者3名である。本庶博士は、当初Genetics Institute(後にDana Faberが買収)のDr. FreemanやDr. Woodsとの間でMTA(material transfer agreement)契約を締結の上、研究成果や材料の交換をしていた。Dr. Freemanは‘PD-L1’タンパクの発見者として知られ、1999年8月、PD-L1関連の特許仮出願を行った。その後も、本庶博士との間で、研究成果の情報交換が行われた。Freeman/WoodsのPD-L1仮出願の存在を知った本庶博士は2002年6月、共同発明者として自身の名前を追加するよう求めたが、Genetics Instituteはその要求を拒絶した。(この問題は、本件では争われていない。)

本庶博士は2002年7月、京都大学の3名の研究者と連名で、自分の発明について日本特許出願を行い、以後、関連出願を行った。それらを優先権主張して米国に特許出願を行い、それが認められたのが上記の特許(以下、関連特許)である。関連特許には、Dr. Freemanが発見したPD-L1との関係や、本庶・Freeman・Woodsの研究分野の分担などが記載されていた。

Genetics Instituteを買収したDana Farber Cancer Instituteは、関連特許の共同発明者としてDr. Freeman とDr. Woods を含めるための明細書訂正命令をマサチューセッツ地裁に求めた。訂正の理由として提示された8つの項目について、地裁は詳細に検討し、関連発明に対するDr. FreemanとDr. Woodsの貢献を認め、発明者名の記載を訂正するよう命じた。小野薬品はこの判決を不服としてCAFCに控訴した。

CAFCは、地裁の判決を支持した。CAFCは、共同発明とは、課題を解決するための2人以上の協働による成果であるとの判例を引用し、Dana Farberによって各発明者が別々に発明全体を着想するかあるいは着想の瞬間に参加していることを求めているかのようだと非難されている小野薬品の主張を排斥した。そして、共同発明者がたとえ他の発明者より貢献度が低くても、また同時期に同じ場所で一緒に作業をしていなくても、何らかの重要な観点で発明の着想や実施化に貢献していることが共同発明の必須要件であり、貢献の程度に関する明確な下限は存在しないと判示した。また、関連特許のPD-1レセプターは、Freeman発明のPD-L1リガンドと結合していることも本庶特許への貢献の証と認定された。