CAFC判決

CAFC判決

CyWee Group Ltd. 対 ZTE (USA), Inc. LG Electronics Inc. 事件

CAFC, No. 2021-1855 (January 18, 2024)

この事件では、IPR申請者が積極的に参加しない場合を除き、IPR手続きを積極的に行わないとする同意に基づいて参加した参加者が、IPR申請者が手続きを断念したため、積極的にIPR手続きに参加し、補正クレームへの反対および無効証拠を提出した。PTABでは、参加者の手続きへの単独での参加を認め、提出した無効証拠を採用し、IPR対象クレームを無効とした。CAFCでもPTABの決定を支持した。

IPR申請者が、積極的なIPR手続きの遂行を断念したため、補助的役割のIPR参加者が新たな先行特許を追加してIPR手続きを行い、その結果、クレームが無効とされた事案

CyWee Group Ltd.(以下「CyWee」)は3Dポインティングデバイスに関する米国特許8,441,438(以下「438特許」)の特許権者である。ZTE(USA),Inc(以下「ZTE」)は、438特許についてのIPRを申請した。訴外LG Electronics Inc.(以下「LG」)は、438特許の侵害訴訟を起されていたため、438特許に対する係属中のIPRに参加を申立てた。参加の条件としてLGは、ZTEがIPR手続きに積極的に参加しない場合を除き、IPR手続きには積極的に行わないことに同意した。

LGのIPR参加申立てについての決定が出される前に、CyWeeは438特許のクレーム20~24の補正を要求したが、PTABは、補正が明細書の記載で支持されていない、クレーム23は、先行技術に対して無効という理由により、クレーム23を無効と決定し、同時に、LGの条件付のIPR参加を認めた。具体的には、①ZTEと提出書類を統合すること、②証言(testimony)の採取および宣誓証言(deposition)の防御についてはZTEに委ねること、③追加の宣誓証言や口頭審理を求めないこと、④手続きの複雑化や遅延を最小限にするよう配慮すること―であった。

CyWeeは、再度、クレーム20-24の補正を要求した。補正クレーム21, 24は、用途を、セルラーフォンの3Dポインティングデバイスに限定する補正であった。ZTEは、「もはや有意義な敵対関係にはない」として異議を申し立てなかったため、LGは補正に反対する許可をPTABに求めた。PTABは最終的にそれを認め、ZTEに代わってLGが独自に無効証拠と共に意見書を提出することを認めた。LGは、ZTEの提出した先行特許に新たに先行特許1件を追加して、3件の組み合わせにより438特許のクレーム20-24は自明であると主張した。PTABは、438特許のIPR対象クレームが全て無効であると決定し、CyWeeのクレーム補正要求を退けた。CyWeeはこの決定を不服としてCAFCに控訴し、PTABが、LGが補正要求に反対することを認め、無効証拠を提出することを認めたのは誤りであったと主張した。

CAFCはPTABの決定を支持し、その理由を次のように説明した。PTABが補助的な役割でLGのIPR参加を認めたにもかかわらず、二度目のクレーム補正に対するLGの反対を認めたことに何ら問題はない。ZTEが積極的にIPR手続きに参加しない場合、LGが補助的な役割に拘束されないことは約定の中で明らかである。これは新規の公知例を引用して証拠提出する場合も同様である。当業者に先行特許の組み合わせを想起させるものは実質的な証拠となることは判例で確立している。本件で引用された先行特許は、新規のものを含め、証拠として機能する。

なお、CyWeeは、438特許について、Google LLCとも争った(CyWee Group Ltd. 対 Google LLC, et al 事件)。