CAFC判決

CAFC判決

Cybersource Corp. 対 Retail Decision Inc. 事件

No. 2009-1358,2011,10,16-Aug-11

この事件において、CAFCはクレジットカードの不正を検出する方法とシステムに関する特許クレームが米国特許法第101条に基づく主題適格性の基準を満たさないと判断した地方裁判所の判決を維持しました。この判決では、クレームされた方法が、人間だけによって精神的に、あるいは紙とペンだけで実行される場合には、主題適格性のない抽象的概念と認定されました。Beauregardクレームにも方法クレームと同様に米国特許法第101条に基づく「機械又は変換テスト」が適用されることが明らかになりました。

精神的あるいは紙とペンだけのクレームは主題適格性のない抽象的概念と認定

Cybersource Corp. 対 Retail Decision Inc.事件において、CAFCは「インターネットを介した顧客と販売業者間のクレジットカード取引における不正を検出する方法とシステム」に関するサイバーソース(Cybersource)の特許権の二つのクレームを、主題適格性(特許法上の発明であること)に関する第101条に基づき無効としたカリフォルニア州北部地方裁判所の略式判決を維持した。

第101条は主題適格性を持つ4分類の発明(プロセス、機械、製品及び組成物)を規定している。最高裁でのBilski 対 Kappos事件に先立って、CAFCはプロセスが第101条に基づき主題適格性があるか否かを判断するために「機械または変換テスト(machine-or transformation test)」を適用した(注)。

このテストは、「(1)特定の機械または装置に関連付けられている、もしくは(2)特定の物を変化させて異なる状態や物にするものである」場合に限り、プロセスに特許性があるとしている。Bilski事件において、最高裁は機械または変換テストが第101条に基づくプロセスの特許性を判断する上で有用なツールであると指摘したが、機械または変換テストを唯一無二の排他的なテストとしてCAFCが使用したことについては誤りであると判断した。

サイバーソース事件において、CAFCは最高裁によるBilski判決を適用し、「インターネットを介した顧客と販売業者間のクレジットカード取引における不正を検出する方法とシステム」に関する二つのクレームは特許適格性がないと判断した。

問題とされた方法クレームは、(a)クレジットカード取引によって特定されたインターネットアドレスを利用した他の取引に関する情報の取得、(b)他の取引に基づくクレジットカード番号のマップの構築、(c)取引が有効か否かを判断するためのクレジットカード番号のマップの利用、といった三つのステップを含む。

CAFCは、このクレームは機械または変換テストの双方の要件を満たさないとした地方裁判所の判決を維持し、クレームの明白な文言によると、その方法は機械によって実行されることを全く必要としないため、「クレジットカード番号とインターネットアドレスに関するデータの単なる収集と体系化は、テストの変換要件を満たすには不十分である」と述べた。

CAFCは、インターネットは不正の検出を行うものというより、むしろ単なるデータのソースであるとして、インターネットとの関与はテストの機械要件を満たすには不十分であると認定した。

CAFCは、Bilski事件において、機械または変換テストが主題適格性に対する唯一無二のテストでないことが認定されたので、機械または変換テストを満たさないことは審理の終結とならないことを認めた。そしてCAFCは、クレームは主題適格性に対して判例が形成した例外のひとつに該当し、抽象的概念であると判決した。

CAFCは、「精神的に実行されうる」または「ペンと紙を使って」実行されうる人間の知的活動と同等である」方法は抽象的概念であると理由づけ、クレームの最初の2つのステップである(a)クレジットカード取引に関する情報の取得、(b)取引のマップの作成は、ペンと紙を用いて人間により実行されうると認定した。

CAFCは、クレームの最後のステップは、人間によって精神的に実行される論理的な推論を含むようにかなり広く表現されていると述べた。従って、CAFCはクレームに記載された発明が抽象的概念にすぎず、主題適格性を欠くと結論付けたのである。

CAFCは、第二の問題とされたクレームについても、第101条の要件を満たさないとした地方裁判所の判決を維持した。このクレームは「特定のプロセスをコンピュータに実行させるためのプログラム命令を含むコンピュータ可読媒体(例えば、ディスク、ハードドライブ、その他のデータ格納装置)のクレーム」であるいわゆるBeauregardクレームの形式で記載されている。

CAFCによると、このクレームは方法クレームの三つのステップの処理に関する命令を含むコンピュータ可読媒体に関連する。

サイバーソースはまず、Beau-regardクレームは第101条に基づくプロセスというよりむしろ製品であり、その定義によると製品は抽象的概念には該当しないと主張した。

CAFCは、このクレームの根底にある発明は「クレジットカードの不正を検出する方法であり、コンピュータが読取可能な情報を格納するための製品ではない」として反対した。従ってCAFCは、Beauregardクレームは通常は製品に対する主題として扱われるが、このBeauregardクレームはプロセスに該当すると分析し、プロセスクレームに適用可能な機械または変換テストが適用されると判断した。

サイバーソースは次に、機械または変換テストに基づいて、コンピュータ可読フォーマットへの関与はテストにおける機械要件を満たすとして、このクレームは主題適格性があると主張した。

しかし、CAFCは、機械の使用は「クレームの範囲に重要な限定を課す」または「クレームされた方法の実行が許可される際に顕著な役割を果たさなければならない」と述べ、この主張を認めなかった。この基準を適用し、CAFCは純粋な精神的プロセスは、コンピュータ可読フォーマットにおいて単にプロセスをクレームするだけでは特許を受けることができないと判断したのである。

従って、CAFCはこのBeau-regardクレームは機械または変換テストの要件を満たさないと認定した。

CAFCは、このクレームが、方法クレームと同じ理由により抽象的概念に関連していると指摘した。コンピュータが方法クレームのステップを実行することが求められるため、CAFCは、Beau-regardクレームが純粋な精神的プロセスから変換されていないと判断した。よって、CAFCはBeauregardクレームも抽象的概念にすぎず、主体適格性を欠いている判断したのである。

この判決は、最高裁によるBilski判決以降で、特許性のある主題に関する基準の最も厳格な適用のひとつを表しているようである。

サイバーソース事件は以下の指針を示している。(1)人間だけによって精神的に、もしくはペンと紙を用いて実行される方法クレームは特許性のない抽象的概念である、(2)いわゆるBeauregard形式で記載されたクレームは、方法クレームと同様に米国特許法第101条に基づく基準の適用対象となりうる。

Key Point?この事件において、CAFCはクレジットカードの不正を検出する方法とシステムに関する特許クレームが米国特許法第101条に基づく主題適格性の基準を満たさないと判断した地方裁判所の判決を維持した。この判決では、クレームされた方法が、人間だけによって精神的に、あるいは紙とペンだけで実行される場合には、主題適格性のない抽象的概念と認定される。Beauregardクレームにも方法クレームと同様に米国特許法第101条に基づく「機械または変換テスト」が適用されることが明らかとなった。