CAFC判決

CAFC判決

Cooper Techs. 対 Dudas事件

No. 2008-1130,2008,11,19-Aug-08

この事件は、両当事者間の再審の対象になる“原出願”の解釈について扱った事件です。CAFCは、“原出願”の文言についてUSPTOの解釈に同意し、1999年11月29日以降を出願日とする出願であれば、たとえその出願が1999年11月29日より前の出願について優先権主張した出願であったとしても、再審の対象となることを明らかにしました。

当事者系再審査において争うことができる範囲について

この事件は、どの特許が当事者系再審査の対象になるかを考慮する際に、何が「原出願」とされるかという問題を扱ったものである。

当事者系再審査は、登録済み特許の再審査において第三者が幅広い役割を担うことを可能にする。この手続の目的は、特許訴訟よりもコストが安い選択肢を第三者に与えることである。

クーパー・テックノロジーズ(Cooper Techs.)事件の中で論じられた当事者系再審査は、1999年の米国発明者保護法(以下、AIPA)に由来する。AIPA第4608条に準じ、この手続は「米国内にて、AIPAの制定日である1999年11月29日以降に出願された原出願をもとに発行された特許」について利用可能である。

この事件において、トーマス&ベッツ(Thomas & Betts Corporation 以下、T&B)は、クーパーが所有する米国特許第6,984,791号(以下、791特許)に対する当事者系再審査の開始をUSPTOに請求した。

791特許の元となった出願は2003年4月14日に出願された出願番号10/412,683(以下、683出願)である。

683出願は、一連の出願のうち1993年3月10日を最初の出願日とする継続出願と一部継続出願を基礎としていた。

USPTOはT&Bの再審査請求を認めた。クーパーはUSPTOに対し、791特許は1999年11月29日以降に出願された原出願を基礎としていないという理由により当事者系再審査手続を打ち切るよう申し立てた。

クーパーは、791特許の元となった683出願は1999年11月29日以前の出願を優先権主張した出願であり、したがって一連の出願の最初もしくは「原」出願はその日より前に出願されていると主張した。

「原出願」の解釈により、USPTOは791特許が683出願から成立しており、1999年11月29日以前を出願日とする出願を優先権主張してはいるけれども、683出願は1999年11月29日以降に出願されているので、683出願はAIPAの目的における「原出願」であると結論づけてクーパーの申し立てを却下した。

USPTOの却下に対し、クーパーは地方裁判所においてUSPTO長官を相手取り、行政手続法のもとAIPAに対するUSPTOの解釈に異議を申し立てる裁判を起こし、T&Bも参加した。

略式判決を求めた反対請求において、地方裁判所は、AIPAの中で用いられている「原出願」に対するUSPTOの解釈は「特許法のもと確立された文言の意味と完全に一致し」、USPTOの解釈は「他の法的宣言と矛盾しない」と認定した。(Cooper Techs. Co. 対 Dudas 事件、No. 1:07-CV-853, slip op. 9~10ページ、E.D. Va. 2007年10月30日) 地方裁判所は、791特許が当事者系再審査の適切な対象になると決定した。(同判決14ページ) クーパーはCAFCに控訴した。

地方裁判所は、USPTOによるAIPAの解釈にどの程度の敬意を与えるべきか検討することを拒絶したが、CAFCはこれが重要な問題であると判断した。

CAFCは、手続きの実行に関する法の条文の解釈において、USPTOに多大の敬意を与えるべきであると認定した。「原出願」の定義を形成するうえでUSPTOが用いた過程を審理した後、CAFCは、USPTOの第4608条に関する解釈は許容できるものであり、故にUSPTOの解釈に従うべきであると判断した。

その結果として、USPTOの解釈は有効となった。したがって、「原出願」という文言は1999年11月29日以降に出願されたどの優先出願にも当てはまり、USPTOは当事者系再審査手続の打ち切りを求めるクーパーの請求を拒否する権利を有していた。

この事件は、当事者系再審査を利用できる特許の範囲を扱ったものであるため、重要である。当事者系再審査手続は、第三者が裁判に訴えることなく発行済み特許に対して利害関係を解消する有効な手段となりうるので、いつ利用できるのかに関する理解は重要である。