CAFC判決

CAFC判決

Checkpoint Systems 対 All-Tag Security S.A.事件

2005,10,2005年7月20日 CAFC判決

特許付与後に発明者の記載に誤りがある場合、その誤りに欺く意図がなかった場合に、特許権者は特許法第256条に基づき発明者を訂正することが可能です。この事件のポイントは、発明者の記載漏れを理由に特許法第102条(f)に基づく特許無効を主張した場合、特許の発明者が正しくないことを示す、明白且つ説得力のある証拠が必要であることが明示されている点にあります。訴訟の目的に用意された宣誓証言が、出願時の宣誓書と矛盾する内容である場合、その訴訟目的に用意された宣誓証言にはそれを裏付ける証拠が必要であり、証拠がない場合は不適切であると判断されます。

発明者と、出願及び訴訟の過程で提出された宣誓書における記載との関係

2005年7月20日、CAFCは、クレームされた発明、米国特許第4,876,555号(555特許)は、Paul R. Jorgensonが単独発明者として誤って記載されており、35 U.S.C. 102(f)に違反するために無効であるという理由から地方裁判所が下した、被告であるAll-Tag Security, S.A.(ベルギー)、All-Tag Security Americas, Inc.(合わせて「All-Tag」)及びSensormatic Electronics Corporation(Sensormatic)に有利な略式判決を破棄し、事件を差し戻した。

Checkpoint Systems, Inc. (Checkpoint)は、商品の窃盗を防止するために小売業界で使用される、使い捨ての無効化可能な共振ラベルのメーカーである。Checkpointは、共振ラベルとそのラベルを生産する方法をクレームした555特許を所有していた。

1980年代、Checkpointは共振ラベルをActron(スイスの会社)に供給した。Franz Pichlは、Actronの代表取締役兼所有者であった。1985年、PichlはActronで働かせるためにLukas Geigesを雇用した。1986年、CheckpointとActronの間の供給契約が終了した。

Pichlはまた、共振ラベルをActronに供給するために設立されたとされるスイスの企業であるDurgo AG(Durgo)の共同所有者の一人であった。1987年、Durgoはスイス特許庁に、共振ラベルに関する特許出願を行った。1988年、このスイス出願を優先権主張して、米国出願第168,486号(486出願)が米国特許商標庁に出願された。486出願は、Durgoに譲渡されており、Actron、Durgo、及びAll-Tagの独立技術コンサルタントであるJorgensonが単独発明者として記載されていた。1988年の出願は555特許として発行された。

486出願の審査過程で、Jorgeson、Pichl、及びGeigesは皆、Jorgesonが486出願の発明者であり、また、かれらの供述は真実であり、もしくは真実であると信じていること、さらに故意になされた虚偽の供述は、罰金または拘禁、もしくはその両方により処罰されること、そしてそのような故意による虚偽の供述を行えば、出願した、または既に許可された特許の有効性が失われることを認識している、と表明した宣誓書に署名した。

1989年1月、ActronはDurgoを買収し、その486出願の権利を取得した。555特許は同年付与された。Checkpointは1995年にActronを買収した際に、 555特許の所有者となった。

Pichlは1989年、ActronがDurgoを買収した後にActronを退社した。1991年、PichlはAll-Tagを設立した。2001年5月、Checkpointは555特許の侵害を理由にAll-Tagを提訴した。All-Tagは、全ての発明者が正しく記載されていないことを理由に、米国特許法第102条(f)に基づき555特許は無効であるとする略式判決の申立をした。

All-Tagの略式判決の申立を認容するに当たり、地方裁判所は、2002年に訴訟用に作成されたJorgenson,Pichl,及びGeigesによる宣誓書に依拠した。この宣誓書には(1)Jorgensonは 555特許においてクレームされた発明の主題の単独発明者ではない、(2)JorgensonとPichlは共同発明者である、(3)CheckpointとActron間の過去の契約関係に基づきCheckpointが出願の所有権を主張することを避けるために、Pichlの名前は486出願において意図的に削除された、と供述した。

Checkpointは、All-Tagは譲渡人の禁反言の原則に基づき特許の無効を主張することができず、また、Jorgenson、Pichl及びGeigesによる宣誓書は、特許を無効とする明瞭かつ説得力のある証拠としての基準を満たすには、裏付けが不十分である、と主張し、この申立に対し反論した。Checkpointはこの反論をサポートする何の供述書も宣誓書も提出しなかったが、審査段階の1988年に作成された宣誓書と2002年に作成された訴訟目的の宣誓書との間の矛盾に基づき、事実に関する真正なる争点があると主張した。

地方裁判所は、譲渡人の禁反言は適用されないと判示し、JorgensonとPichlは555特許の共同発明者であるとした2002年の「議論の余地のない」宣誓書に基づき、第102条(f)に基づき特許を無効とする略式判決を下した。

略式判決に際し、地方裁判所は1988年と2002年の宣誓書同士の矛盾が、重要な事実に対する真正なる争点となるか否かについては言及しなかった。

CAFCは略式判決を破棄した。略式判決の申立について判断する際には、証拠を審査し、被申立人の意向を推断しなければならないことを理由に、CAFCは2002年の宣誓書を真正なものとは認められないと述べた

さらにCAFCはJorgensonが1988年の486出願の単独発明者として記載されていた理由に関する2002年宣誓書中の説明は、1988年及び2002年の宣誓書の間にある矛盾を打ち消すものではないと述べた。

そして、CAFCは特許無効の略式判決を破棄したことを踏まえて、譲渡人の禁反言の争点については判断を拒否し、請求に応じて一審において判断されるべきとして争点を差し戻した。

Checkpointは、2002年の3つの宣誓書は十分な裏付けがされていないことを理由に、それらの宣誓書では、明白かつ説得力のある証拠により特許法第102条(f)に基づく特許無効性の一応の立証(prima facie showing)を行うことができないと主張した。

これに対しCAFCは、宣誓証言を裏付ける証拠が無い単なる供述証拠に基づく特許の無効には、同意しかねるとのかねてからの意見を述べた。

裁判所は、証人は忘れやすく、しばしば、証人として召喚した当事者によって指導されたり、偽証をさせられたりすることから、宣誓証言には裏付けが必要であると認識していた。

CAFCが地方裁判所の略式判決は不適切であったと判決したこと、及び、先に提出された更なるディスカバリーの申立について地方裁判所が判断を下さなかったことを理由に、CAFCは、一審における裏付けに関する争点についてCAFCが判決を下すことは不適切であると述べた。

CAFCはまた、発明者が欺く意図無しに特許に発明者として表示されていなかった場合の、特許後の発明者の訂正を認めた米国特許法第256条に対する地方裁判所の対応について判断することを拒否した。

しかし、CAFCは、Fannu 対 Iolab Corp.事件、155 F3d 1330,1337(Fed.Cir.1998)における過去の判決を繰り返し、訴訟当事者が、発明者の記載漏れを理由に特許法第102条(f)に基づく特許無効を主張した場合、地方裁判所はまず、特許の発明者が正しくないことを示す、明白且つ説得力のある証拠があるかどうかを判断しなければならないと述べた。

発明者に誤りがあると認定された場合、特許権者は特許法第256条に基づき発明者を訂正することが可能であると説明した。

この事件は、特許の発明者を全て正直に開示しない場合には、特許の有効性が脅かされることを示している。そのことは、訴訟のみを目的として作成された宣誓書が特許出願の際に作成された宣誓書と矛盾する場合も、問題となることを、本事件は強調している。