CAFC判決

CAFC判決

CBT Flint Partners, LLC 対 Return Path, Inc.事件

Nos. 1010-1201, 2010-1203,2011,10,10-Aug-11

この事件では、裁判所によるクレームの訂正の基準が明確になりました。訂正が合理的な議論の余地を与えない場合だけでなく、様々に考えられる訂正がクレームの意味または技術的範囲に違いもたらさない場合には裁判での訂正が許可されます。

裁判所によるクレームの訂正の基準が明確にした判決

この事件でCAFCはクレームが不明瞭のため無効であるというジョージア州北地区地方裁判所の認定を破棄した。その際に、CAFCは地方裁判所がクレーム内の誤記を訂正する権限を有すると判断した。

本件特許発明は、スパムとしても知られる未承認メールの送信に対して課金する方法に関する。本件特許発明のクレームは誤記を含んでおり、『the computer being programmed to detect analyze the electronic mail communication(電子メール通信を検出分析するようにプログラムされているコンピュータ)』と記載された発明特定事項を含んでいた。

地方裁判所は、この誤記について、(1)「detect」の削除、(2)「analyze」の削除、(3)「detect」と「analyze」との間への「and」の挿入という3つの考えられる訂正が存在すると認定した。

地方裁判所は、適切な訂正には合理的な議論の余地があると結論付けた。それ故、略式判決の申立てに関して、地方裁判所は自身が訂正を行う権限を有していないと判断し、米国特許法第112条第2段落の下でクレームの記載が不明瞭であるために無効であると認定した。

CAFCは控訴審において、地方裁判所がクレームを訂正する権限を自身が有していないと判断した点で誤りを有すると認定し、Novo Industries L.P. 対 Micro Molds Corp.事件 (注)を引用して、(1)クレームの文言および明細書の検討に基づいて訂正が合理的な議論の余地を与えず、且つ(2)審査経過でクレームの異なる解釈が示唆されていない場合にのみ、裁判所は特許を訂正できることを示した。さらに、裁判所は当業者の観点から訂正を検討しなければならない。

CAFCは、先例から地方裁判所が3つの考えられる訂正を当業者の観点から分析しなかったことを見出した。CAFCはさらに、3つの訂正の選択肢のそれぞれにおいてクレームが同一の範囲および意味であることを当業者が理解するだろうと判断した。

結果として、適切な訂正に関して地方裁判所が推測する必要はなかっただろうとCAFCは判断し、CAFCは地方裁判所が誤記を訂正する権限を自身が有していないと判断した点で誤りを有すると判決した。

この判決はクレームの権限訂正についてのCAFCによる基準を明確にした。従来の事件では訂正が合理的な議論の余地を与えない場合には裁判での訂正が許されたが、この事件では、明細書および審査過程においてクレームの文言が正確に何を意図しているかが明確でなくとも、様々に考えられる訂正がクレームの意味または範囲に違いをもたらさない場合には裁判で訂正が許されると判断された。

Key Point?この事件は、裁判所によるクレームの訂正の基準が明確にした。訂正が合理的な議論の余地を与えない場合だけでなく、様々に考えられる訂正がクレームの意味または技術的範囲に違いもたらさない場合には裁判での訂正が許可される。