CAFC判決

CAFC判決

BMG RIGHTS MANAGEMENT (US) LLC対COX COMMUNICATIONS, INCORPORATED 事件

No. 16-1972,2018,4,1-Feb-18

連邦第4巡回区控訴裁判所はこの判決でデジタルミレニアム著作権法(DMCA)のセーフハーバー規定とインターネットサービスプロバイダ(ISP)加入者に対するISPの二次的責任に関する争点を検討した。最終的に第4巡回区控訴裁判所は、反復的な侵害者へのポリシーを実行及び適用するにあたるIPSへのガイダンスを提供し、裁判所によって侵害者であるとの判決を受けた個人だけではなく、反復的な侵害行為のすべての事例に対処しているISPに対してのみセーフハーバー保護が与えられるとの判断を示した。同時に第4巡回区控訴裁判所は、地方裁判所の陪審への説示を覆して、実際に知っていたことと意図的に目をつぶることは著作権の寄与侵害のために必要とされる意図要件の充足を確立するが、不注意による過失だけでは著作権の寄与侵害のために必要とされる意図要件を充足しないと判示した。

デジタルミレニアム著作権法のセーフハーバー規定とインターネットサービスプロバイダ(ISP)加入者に対するISPの二次的責任に言及した第4巡回区控訴裁判所判決

この事件で連邦第4巡回区控訴裁判所(所在地:リッチモンド)は、インターネットサービスプロバイダ(ISP)であるCox Communicationsはデジタルミレニアム著作権法(17 USC)第512条(a)のセーフハーバー保護(safe harbor protection)を受ける資格を有していないとして、ヴァージニア州東地区連邦地裁の判決を部分的に支持及び部分的に破棄して新たな陪審審理のために差し戻した。

この判断にあたり、裁判所はCoxによる「反復侵害者」の定義を否定し、セーフハーバー保護を分析する目的では、裁判所による侵害判断がなくても顧客が反復侵害者と認定される余地はあると判断した。さらに裁判所は、侵害通知をCoxが完全に無視したこと、及び「反復侵害者」とみなされた加入者との契約を終わらせなかったことを引用して、Coxが「意味のある方法」においてその反復侵害者に対するポリシーを実行しなかったことを確認した。確認において、第4巡回区控訴裁判所は、地方裁判所が著作権に対する寄与侵害への責任に関する陪審への説示は間違いであると判断し、著作権に対する寄与侵害の責任が生じるには、ISP側に単なる過失を超えるものがなければならないことを明確にした。その結果、事件は新たな陪審審理のために差し戻された。

Cox Communicationsは月額制の高速インターネットアクセスを加入者に提供している。Coxの加入者の中には、多人数で著作権保護された音楽やビデオファイルを許可なく共有するために使用される「ピア・ツー・ピア」プラットフォームのBitTorrent上で著作権保護されたファイルを共有して受信する者がいる。Coxの加入者との契約では、Coxのサービスを用いてコンテンツを侵害しようとする加入者へのサービスを停止または終了させる権利を留保している。Cox は加入者による侵害に関する13回の通知を受けた後でサービスを停止し及び終了を考慮するという“13ストライクポリシー”を運用している。2011年、こういったアクションとは無関係な理由により、CoxはRightscorpを「ブラックリスト」に載せた。ブラックリストに載せるとは、CoxがRightscorpから受信した通知を、この通知に関して行動したり閲覧したりすることなく、削除することを意味する。その後ほどなくして、音楽出版会社であり音楽制作の著作権を有するBMGは、自身の著作物を保護するためにRightscorpを採用した。RightscorpはBitTorrentの活動を監視して侵害行為が発生した時を判断し、被疑侵害者のISP(Cox)に通知を送っていた。

2014年11月、Coxはその加入者による著作権侵害の行為について代理的且つ寄与的な責任を有するとして、BMGはCoxに対する本件訴訟を開始した。BMGは、Coxはデジタルミレニアム著作権法(DMCA)第512条(a)に含まれるセーフハーバー防御の資格をCoxに与えるような政策を確立していないと主張した。セーフハーバーの資格には、ISPが「反復的な侵害者である加入者との適切な状況下での契約終了を規定するポリシーを採用し且つ合理的に実行すること」が必要となる。地方裁判所は、合理的な陪審であればCoxがこのような政策を実行しているとは判断できないとして、BMGによるサマリージャッジメントの申し立てを認めた。裁判所は、Coxは反復的な侵害者を知りながらも侵害者のアカウントを止めなかったことの証拠をBMGが提出し、そしてCoxが反対の証拠を提出しなかったと述べた。事件は陪審裁判に進み、その結論において地方裁判所は、 寄与侵害を立証するためには、Coxの加入者による「BMGの著作権保護された作品の直接侵害」、「Coxはこのような侵害行為を知っていたもしくは知っているべきだった」こと、及び「Coxがこのような侵害行為を誘導し、引き起こし、もしくは実質的に寄与した」ことをBMGは示さなければならないと、陪審に説示した。陪審は、故意の寄与侵害の責任を認め、BMGに2,500万ドルの法定損害賠償を認めた。

控訴審において、第4巡回区控訴裁判所は地方裁判所のセーフハーバーに関する判決を支持した。このような判断において、512条(a)での「反復侵害者」の用語は「判決を下された」反復侵害者(すなわち、著作権侵害の複数の事例において裁判所によって責任を負うとされた者)のみを指すというCoxの反論が否定された。代わりに、第4巡回区控訴裁判所は、「侵害者」の適正な定義は「侵害行為を行っているすべての者」であると判断した。この分析において裁判所は「侵害行為」と「侵害していると最終的には判断される」行為とを区別するDMCAの第512条(g)(1)を引用した。裁判所はこの条文に言及し、「議会は判決を下された侵害を明示的に表す方法を知っていたにもかかわらず、反復侵害者の規定においてはそのようにしなかった」と述べた。 第4巡回区控訴裁判所はさらに、立法経緯を参照して、この規定は、反復的な侵害の影響としてインターネットアクセスを失うという「現実的な脅威」を課そうとしていると説明した。裁判所は「インターネットアクセスを失うリスクは、すでに裁判所の判決により民事罰を受けている者のみに適用される場合、侵害抑止を可能にする「現実的な脅威」にならない」と論じた。さらに、第4巡回区控訴裁判所は、Coxは反復侵害者との契約終了を規定するポリシーを合理的に実行していないと判断した。この判断に至った後で、第4巡回区控訴裁判所は、Coxが侵害を行う加入者との契約を終了して再開を認めなかったことは一度もなかったことを示唆する証拠を引用し、さらに「Rightscorpからのすべての通知を無条件に無視する」というCoxによる決定を引用した。

陪審への説示について、第4巡回区控訴裁判所は、Coxが「このような侵害行為を知っていたか知りえたはずであった」場合に著作権の寄与侵害の責任を負う可能性があると地方裁判所が陪審に説示したことが間違いであったこと関しては、Coxに同意した。第4巡回区控訴裁判所は、実際に知っていたことと故意に目をつぶったことは著作権の寄与侵害のために必要とされる意図要件の充足を確立するが、不注意による過失は著作権の寄与侵害のために必要とされる意図要件の充足を確立しないと結論づけた。さらに、第4巡回区控訴裁判所は、Coxがその加入者による侵害について「一般論として知っている」だけは寄与侵害を立証するのに十分ではなく、そして差し戻し審においては「寄与侵害に関する説示が、Coxが侵害の特定の事実を知っていたこと、もしくはこのような事実について意図的に目をつぶっていたことを必要とする」と説明した。

第4巡回区控訴裁判所のBMG事件における分析は、DMCAのセーフハーバー規定と加入者のアクションについてのISPの責任に関して、重要な意味を有する。特に、第4巡回区控訴裁判所は、反復的な侵害者へのポリシーを実行及び適用するにあたるISPへのガイダンスを提供し、裁判所によって侵害者であるとの判決を受けた個人だけではなく、反復的な侵害のすべての事例に対処しているISPに対してのみ保護が与えられることを確立した。また裁判所は、著作権法における二次的責任の範囲を明確にして、ISPのサービスが実質的に非侵害の用途で使うことが可能であるとしてもその加入者の行為についてISPは寄与的な責任を有する可能性があるとされたが、単なる過失、若しくは加入者による侵害行為を一般論として知っていることのみに基づいて、寄与的な責任を負わないと判示した。

情報元:

Michael P. Sandonato

Brian L. Klock

Venable LLP