CAFC判決

CAFC判決

Bill of Lading Transmission and Processing System Patent Litigation 事件

Nos. 2010-1493, -1494, -1495, -1496, 2011-1101, -1102,2012,9,7-Jun-12

この事件では特許権侵害を主張する訴状の記載要件が争点の一つとなりました。最近の最高裁判決において、訴状には裁判所が主張された不正行為に対する責任が被告にあるという妥当な推論を引き出すに十分な、事実に関する内容が訴状に述べられていることを要件とする、高度な訴状の記載要件が規定されました。しかしこの規定は、連邦民事訴訟規則が示す訴状の書式と矛盾する部分があり、CAFCは、この規定は直接侵害の主張には適用されないと判示する一方、間接侵害の主張には適用されると判示し、事件を差し戻しました。

R+L(R+L Carriers,Inc.)は、R+Lがドライバーテック(DriverTech LLC)及び他の侵害被疑者らに対する特許件侵害の主張をしていなかったとして、オハイオ州南地区地方裁判所が申立を棄却したことに対し控訴した。CAFCは、R+Lは寄与侵害の主張をしていなかったが、直接侵害および誘導侵害に関しては十分に主張していたと認定し、地裁判決を一部支持、一部破棄して事件を差し戻した。

R+Lはトラック1台に満たない小口貨物(less-than-a load trucking)業界の大手運送業者である。”Less than truckload shipping”とは、特に約2万ポンド(9072㎏)までの重量の、相対的に小口の積荷の輸送のことである。

2008年、R+Lは被告とその顧客が米国特許第6,401,078号(078特許)のクレームを侵害している可能性があることを知った。078特許は、小口貨物の書類作成、請求、輸送の自動化方法に関するものであった。

R+Lは100ページ以上に及ぶ訴状を訂正し、詳細な事実の主張と、078特許の特許権侵害が発生したことによる「相当な影響」について述べていた。訴状にはさらに、各被告は、誘導侵害及び寄与侵害という間接的侵害行為の責任を負うものであると主張していた。

訴答において、一部の被告が合同で、連邦民事訴訟規則第12条(b)(6)に基づき、訴状に主張が述べられていないことを理由に裁判の棄却を申し立てた。

連邦民事訴訟規則の下では、訴状には伝統的に、原告に救済される権利があることを示す、短い平易な供述がなければならない。米国最高裁は最近、主張が抜けていることを理由とする裁判の棄却申立を避けるためには、原告は訴状の中に、裁判を「妥当」とするに十分な事実の主張が必要であると判示していた。

この判例の下では、裁判所が主張された不正行為に対する責任が被告にあるという妥当な推論を引き出すに十分な、事実に関する内容が訴状に述べられていることを妥当性の要件とする。

地方裁判所は、R+Lが直接侵害したとされる特定の顧客を明記しなかったことを理由に、R+Lは直接侵害の主張を明記しなかったと結論付けて、被告による裁判の棄却申立を認める判決を下した。直接侵害の十分な主張なしに、間接侵害の主張も有り得ないので、地方裁判所は誘導侵害及び寄与侵害の主張も棄却した。

それでもなお、事実審裁判所は間接侵害に関するある争点について言及し、被告が誘導侵害の明確な意思を持っていたことを、R+Lはもっともらしく訴状に述べていなかったので誘導侵害は無いと認定し、また、侵害被疑品が実質的に非侵害な用途に使用できないことを何も示していなかったので、寄与侵害も無いと認定した。

控訴審においてCAFCは、下級裁判所による直接侵害の主張の棄却を覆し、地方裁判所がR+Lの直接侵害の主張に、新しい高度な訴状の要件を適用したことは誤りであると判示した。

CAFCは、連邦民事訴訟規則の付属書類が特許権の直接侵害の主張に関する書式を提供しており、R+Lの訴状が十分であることを規定していると認定した。その書式は現在の判例に基づいて調整されているものであることから、CAFCは、最高裁が高度にした訴状に関する規則がこの書式と矛盾する範囲は不適切であると判示した。したがって、特許権の直接侵害に関する適切な主張には、特定の直接侵害者を明記する必要はない、と判決した。

しかしながら、CAFCはまた、連邦民事訴訟規則の書式には、特許権の間接侵害の主張に関する書式がなかったので、その書式は誘導侵害または寄与侵害を統制するものではない、と判示した。

次にCAFCは、最高裁が高度にした訴状の要件に基づき、個々の間接侵害の主張を審理した。R+Lの主張には、確かに被告の製品は実質的に非侵害の使用ができないことを明確に述べていなかったので、CAFCは寄与侵害の主張の棄却を支持した。

しかしCAFCは、R+Lの補正後の冗長で詳細な誘導侵害の訴状は、高度になった訴状の基準を満たしていると認定した。誘導侵害者に必要な侵害の知識があったことをR+Lは訴えていなかったが、CAFCは、原告は訴状の中および申立の段階で、その事件を立証する必要は無いと判示した。

したがって、CAFCはR+Lの誘導侵害の主張を却下した地方裁判所の判決を破棄し、直接侵害及び誘導侵害の主張に関する審理手続のために、事件を地方裁判所へ差し戻した。

ビル・オブ・レイディング(Bill of Lading)事件は、Twombly事件及びIqbal事件において最高裁が規定した高度な訴状の規則と、連邦民事訴訟規則が提供するテンプレート書式に見受けられる簡素な訴状とが矛盾することを明らかにした。

さらにこの事件は、直接侵害の主張と間接侵害の主張とでは、訴状の要件に重要な差異があることを明らかにした。その違いは、直接侵害の場合はシンプルな訴状で十分であるのに対し、間接侵害の主張には、より具体的で詳細な主張が実質的に要求されるというものである。

Key Point?この事件では特許権侵害を主張する訴状の記載要件が争点の一つとなった。最近の最高裁判決において、訴状には裁判所が主張された不正行為に対する責任が被告にあるという妥当な推論を引き出すに十分な、事実に関する内容が訴状に述べられていることを要件とする、高度な訴状の記載要件が規定された。しかしこの規定は、連邦民事訴訟規則が示す訴状の書式と矛盾する部分があり、CAFCは、この規定は直接侵害の主張には適用されないと判示する一方、間接侵害の主張には適用されると判示し、事件を差し戻した。