この判決では、CAFCが、審決および実質的な証拠の事実認定を初めから検討していることに注目したい。さらに、「一応の証拠がある事件」の主張に必須でない限り、審判部は請求人の応答とともに専門家による陳述書の提出を許可しても良く、特許権者はそれに応答する機会が与えられることが示された。
当事者系レビューの審決をCAFCが破棄した判決
CAFCは審判部による当事者系レビューの最終的な審決を部分的に破棄した。
ベルデン(Belden Inc.)は米国特許第6,074503号(以下、503特許)の特許権者である。この特許は、コア及び導電ワイヤを1つ以上のダイスに通し、ワイヤをコアの溝に束ね、ケーブルを閉じるように束をねじり、束になったケーブルアセンブリを被覆することによって通信ケーブルを製造する方法の特許である。
一方のバークテック(Berk-Tec LLC)は、通信ケーブル及び配線システムの分野におけるベルデンの競合企業である。バークテックの前任者は503特許の当事者系レビューを申し立てた。
レビュー開始後、審判部は自明性を理由に503特許のクレーム1~4を無効とし、クレーム5、6の特許性を認めた。審判部は主に3つの先行特許に基づき審決を下し、ベルデンは審決を不服として控訴した。
この件において、まずCAFCは、審判部による503特許のクレーム1及び4に関する非特許性の審決について審理した。
クレーム1及び4に関して、ベルデンは、先行特許がケーブルではなく送電線の製造方法を教示すると主張していた。これについてCAFCは、先行特許の名称と明細書との両方が、「通信ケーブル」の製造方法を言及していると述べた。
さらに、ベルデンは審判部に対して「ケーブル」の用語の解釈を求めなかった。ベルデンはまた、先行特許において、ケーブルのねじれを防ぐために板を使用することの動機付けに関する審判部の認定について争った。
CAFCは、先行技術における動機付けを審判部が読み取ったことの裏付けとなる実質的な証拠を、審判部が有していたと判断した。その証拠は、503特許と類似し、同一の課題を扱っていた。
またクレーム2、3について、ベルデンは、2つの先行特許に開示された、第3ダイスを組み合わせることの動機付けが存在しないと主張した。対してCAFCは、先行特許が類似しており、アライメントを強化するために第3ダイスを追加することの利点が当業者に知られていた筈なので、組合せの動機付けの認定を裏付ける実質的な証拠を審判部が持っていたと判断した。
ベルデンはさらに、第3ダイスの追加は摩擦を増加させ、壊れやすいコアに有害であるので、組合せの動機付けは存在しないと主張した。しかし、審判部は、第3ダイスの嵌合は緩いため、第3ダイスの追加により必ずしも摩擦が増加するわけではないと判断した。
結果、クレーム1~4の自明性の認定を裏付ける実質的な証拠を審判部が持っていたことで、CAFCは審判部による無効の判断を支持した。
次に、CAFCは、審判部が有効とした2つのクレームを検討し、審判部の認定を破棄し、これらも自明であるため無効と判断した。
審判部の認定の破棄において、CAFCは、審判部の認定が法律上の誤りに基づいていたと述べた。クレーム5、6は従属クレームであり、ツイストペア絶縁電線をクレームしている。
これらの自明性の審理では、1つの先行特許に開示されたツイストペア導体を、別の先行特許に開示されたケーブルの製造方法に組み合わせることの動機を当業者が有するかに重点が置かれた。
CAFCは、2つの先行技術の組み合わせがクレーム5、6の発明を教示することに争いがないものの、バークテックが証拠の優越によってクレーム5、6の自明性を立証したかどうかに重点を置いた点で、審判部は誤りであったと述べた。
適切な審査では、当業者が一方の先行特許に開示されたツイストペアケーブルの製造に利用する動機付けを有するようなケーブル部品のアライメントに関する課題の解決方法を、他方の先行特許が教示するかどうかを判断すべきであった。
結果、CAFCは、組合せの十分な動機付けが存在したことが記録から明らかであり、クレーム5、6を無効と判断した。
ベルデンはまた、バークテックの応答とともに提出されたバークテックの専門家による陳述書の排除をベルデンが求めた申し立てを、審判部が却下したことに異議を申し立てた。
ベルデンは、ベルデンに公正な応答機会が与えられなかった証拠に審判部が依存した点で、証拠ルールに違反したと主張した。しかし、CAFCはこの主張を否定した。
CAFCは、争点となった陳述書は、ベルデンの専門家の陳述書における意見に応答したものだと判断した。さらに、審判部は争点となった陳述書を引用したが、この引用はベルデンの主張を却下する理由を説明するためのものであった。CAFCは、自明性における「一応の証拠がある事件」においては、争点となった陳述書が必須ではなかったと判断した。
またベルデンは、サーリプライを提出することを要求せず、さらには、公平な応答機会を有していなかったことを主張する他の要求を審判部に行わなかった。
実際に、審判部はバークテックの専門家に対する反対尋問の機会をベルデンに与え、その反対尋問に関するベルデンの詳細な意見を聞いている。したがって、CAFCは審判部による却下の判断を争う根拠が存在しないと判断した。
Key Point?この判決では、CAFCが、審決および実質的な証拠の事実認定を初めから検討していることに注目したい。さらに、「一応の証拠がある事件」の主張に必須でない限り、審判部は請求人の応答とともに専門家による陳述書の提出を許可しても良く、特許権者はそれに応答する機会が与えられることが示された。