CAFC判決

CAFC判決

Authentic Apparel Grp. LLC 対 United States 事件

CAFC No. 2020-1412,2021,3,4-Mar-21

この事件では、契約当事者ではない第三者が、契約当事者として権利を主張する要件に焦点が当てられた。

商標ライセンス契約の第三者受益者であるためには高い立証基準が必要で、契約の中で個人的利益を確保する意図が特定されてなければならないとされた事例

米国陸軍は2010年、ブランド管理会社であるAuthenticに保有する登録商標の非独占ライセンスを許諾した。この契約によりAuthenticは、陸軍の登録商標付の衣料品を製造販売することができた。商標ライセンス契約の下で、陸軍は、陸軍の商標をつけた製品や販促資料についての承認権を持っていた。また、その承認権を行使しなくても責任が問われないと規定されていた。2011年~2014年の4年間に500点の承認申請がAuthenticからなされ、そのうち41点が承認されなかった。契約後、Authenticの商標ロイヤルティの支払いが何度か遅延し、Authenticはその後、2014年分のロイヤルティ支払いを行う意図はなく、訴訟を提起する意図があるとの通知を陸軍に行った。Authenticと同社のReuben会長(原告)は2015年、ライセンス契約違反で合衆国政府(被告)を連邦請求裁判所(the Court of Federal Claims)に訴えた。

請求裁判所で争われたのは、被告が契約違反をしたとの重要事実について真の争いがあるか、被告の一員(Rueben会長)は第三者受益者(third party beneficiary)として本件訴訟の当事者適格があるか、が争われた。請求裁判所は、被告勝訴の略式判決を下し、原告(Reuben会長)の共同控訴人としての適格性を否定した。原告はCAFCに控訴。

原告は、陸軍の契約違反について、陸軍が契約下で使用承認について幅広い裁量を持っていたとしても、陸軍が「商標として」の使用承認を拒否するほどの裁量は持っていない、請求裁判所の解釈によれば陸軍は単に「装飾のため」(decorative purposes)にだけ使用承認することが可能になり、これは商標を顧客吸引力(goodwill)から分離することとなり、商標を無効化させるものである、と主張した。これに対しCAFCは、①控訴審では本件商標の有効性については審理しない、②陸軍の商標であることを明示しなくても、名入りの商品を陸軍関連で販売することによる信用から得る利益がある、③陸軍は品質管理義務を負っており、商標使用の「白紙手形」を与えないのは義務である―などを理由に挙げ、原告の主張を退けた。

契約の当事者となっていないRueben会長の当事者適格について、CAFCは、Rueben会長が商標ライセンス契約の当事者としての法的な利益を持たないし、契約の第三者受益者(third party beneficiary)ではないと認定し、地裁の判断を支持した。契約の当事者となっていない者が、自分の利益が害された第三者受益者であることを立証するためには、高い立証基準が必要となることをこの判決は示した。