CAFC判決

CAFC判決

August Technology Corporation 対 Camtek, Ltd.事件

No. 2010-1458,2011,11,22-Aug-11

CAFCは地方裁判所の判決を覆しましたが、その理由とは別の論点である§102(b)のオン・セール・バーに関して興味深い判断が示されました。CAFCによれば、§102(b)のオン・セール・バーは、発明に関する「商業上の販売の申し出」の時点で発明が「特許を取るための準備が整っている」ことを要求せず、発明が着想された時点で商業上の販売の申し出が発生可能になります。従って、着想前に販売の申し出が行われると共にこれが撤回された場合には、発明に関する販売の申し出が無かったと言え、反対に、販売の申し出が長期に亘り継続している場合、これに続いて着想が行われることにより、着想日の時点で先の販売の申し出は発明に関する販売の申し出となります。

発明の着想日の時点と発明に関する販売の申し出の関係に関する判断

オーガスト・テクノロジー(August Technology Corporation)対カムテック(Camtek, Ltd.)の事件では、CAFCは、ミネソタ地区の地方裁判所がクレーム解釈を誤ったと判断し、地方裁判所による侵害の判断、損害賠償の認定、及び終局的差止命令の承認を取り消した。

この事件は、オーガストの米国特許第6,826,298号(以下、298特許)に関係している。298特許は、「例えばウエハーなどの基板上にプリントされた集積回路を検査するための」システム及び方法をクレームしている。

CAFCは、「ウエハー(a wafer)」が「複数のウエハー(a plurality of wafers)」でもあるとした地方裁判所の解釈を拒絶した。陪審団には欠陥のあるクレーム解釈が提示されたことになるので、CAFCは侵害評決を取り消した。

§102(b)のオン・セール・バーは、判断基準日以前に次の2つの条件が満たされた場合に適用される。(1)製品が商業上の販売の申し出の対象であり、(2)発明が特許を取るための準備が整っている。陪審団は、NSX-80が判断基準日以前には販売されなかったと認定し、それゆえ、NSX-80は§102(b)に基づく先行技術には該当しないと認定した。

CAFCは、§102(b)のオン・セール・バーは、発明に関する「商業上の販売の申し出」の時点で発明が「特許を取るための準備が整っている」ことを要求しないと判断した。商業上の販売の申し出は発明が特許を取るための準備が整う以前であっても発生し得るものであるが、発明の着想日までは発明の販売の申し出をすることは不可能である。それゆえ、CAFCは、着想前に販売の申し出が行われると共にこれが撤回された場合には、発明に関する販売の申し出がなかったと言えると結論付けた。

反対に、販売の申し出が長期に亘り継続している場合、これに続いて着想が行われることにより、着想日の時点で先の販売の申し出は発明に関する販売の申し出となる。CAFCは、「そのような場合、販売者は発明を着想した時点で発明を販売する申し出をしている。それ以前は、販売者は製品のアイデアを販売する申し出をしていただけである」と結論付けた。CAFCは、オーガストが判断基準日以前にNSX-80を着想していたか否かに関する記録は明らかではないと結論付けた。

続いてCAFCは、仮に陪審団がNSX-80が販売されていたため先行技術であると判断していたとしても、他の引用先行技術を考慮すれば、NSX-80によって係争クレームが自明になることはないと結論付けた。

CAFCは、引用先行技術及びNSX-80がクレームされたエレメントの全てを示唆する訳ではないと陪審団が示唆した事実認定が、実質的な証拠によって支持されていると判断した。同様の判断に基づき、CAFCは、不正行為(inequitable conduct)の分析の目的においてはNSX-80は重要な先行技術ではないと結論付けた。

重要なことは、オーガストの事件では、発明が着想された時点で商業上の販売の申し出が発生可能になるとCAFCが判示したことである。

CAFCによって説明された枠組みは、発明の着想及び発明の販売の申し出に関係する事実に関して、幾分難しい争点をもたらすかもしれない。というのも、発明の着想及び発明の販売の申し出は、証人の記憶にしか残らない場合があるからである。

Key Point?CAFCは地方裁判所の判決を覆したが、その理由とは別の論点である§102(b)のオン・セール・バーに関して興味深い判断が示された。CAFCによれば、§102(b)のオン・セール・バーは、発明に関する「商業上の販売の申し出」の時点で発明が「特許を取るための準備が整っている」ことを要求せず、発明が着想された時点で商業上の販売の申し出が発生可能になる。従って、着想前に販売の申し出が行われると共にこれが撤回された場合には、発明に関する販売の申し出が無かったと言え、反対に、販売の申し出が長期に亘り継続している場合、これに続いて着想が行われることにより、着想日の時点で先の販売の申し出は発明に関する販売の申し出となる。