CAFC判決

CAFC判決

Akamai Technologies, Inc. 対 Limelight Networks, Inc. 事件McKesson Technologies, Inc. 対 Epic Systems Corp. 事件

Nos. 2011-1538, -1567, 2012-1129, -1201,2012,11,31-Aug-12

この事件においてCAFCの大法廷は、どのような行為が誘導侵害となるかについて分析し、被告がクレームの全てのステップを実施していない場合でも、方法クレームの誘導侵害の責任を負う可能性があるという新たな基準を提示しました。大法廷でも意見が割れたこの事件は最高裁の判断を仰ぐ可能性があり、今後の判決の動向が注目されます。

アカマイ(Akamai Technologies, Inc.)対ライムライト(Limelight Networks, Inc.)及びマッケッソン(McKesson Technologies, Inc.)対エピック(Epic Systems Corp.)事件において、CAFC大法廷は、先の2件のCAFC判決を再度審理した。

その2件の先の判決においてCAFCは、それぞれの事件の被告が特許の方法クレームの個々のステップを実施していなかったとして非侵害の認定をしていた。

アカマイ事件のマサチューセッツ州地方裁判所による判決の控訴審における争点の特許クレームは、インターネットを介して効率的にデータを送信する方法に関するものであった。

特許は、複製された一連のウェブサーバ上にコンテンツ・プロバイダのデータを置き、データがそれらのサーバから読み出し可能になるように、コンテンツ・プロバイダのウェブページを更新する方法クレームを含んでいた。

一連のサーバの所有者である被告による直接侵害を陪審員が認定した後で、地方裁判所はその事実認定を破棄し、被告による法律問題としての判決の申立てを認めた。地方裁判所は、方法クレームの全てのステップは実施されているが、被告はコンテンツ・プロバイダのウェブページを更新していないので、被告自身は方法クレームの全てのステップを実施していない、と認定した。

したがって、地方裁判所は、被告は直接侵害の責任を負わないと判決し、CAFCの合議体もこれを支持した。

マッケッソン事件では、特許は医療提供者とその患者間の電子的コミュニケーション方法に関するものであった。被告は、医療提供者とその患者間の電子的コミュニケーションを可能にするソフトウエアを開発した。

被告ではなく、医療提供者と患者が方法クレームのいくつかのステップを実施していたので、ジョージア州北部地方裁判所は、被告による非侵害の略式判決の申立てを認め、CAFC合議体もこれを支持した。

CAFCの大法廷は、単独の当事者もしくはそのエージェントが特許を直接侵害するためには方法クレームの個々のステップを実施しなければならないことは十分に解決済みの問題であるとの見解を示した。その理由として、CAFCはこの要件は違法行為に対する厳しい法的責任が求められるからであると説明した。換言すると、直接侵害は特許発明であることの認識を必要としないので、知らずに侵害をほう助した者は責任を負うべきではない、という適切な公益を定めている。

アカマイ事件およびマッケッソン事件では、どちらの事件の被告も方法クレームの個々のステップを実施していなかったので、CAFCは、被告らは争点の特許の直接侵害の責任を負うことはできないことに同意した。

しかしながら、大法廷での僅差の多数派は、アカマイ事件およびマッケッソン事件の被告に誘導侵害の責任を問う可能性については保留した。それにより、CAFCは過去の判例であるBMC Resources Inc. 対 Paymentech, L.P., 498 F.3d 1373(Fed. Cir. 2007)を明確に破棄した。

BMC事件において、CAFCは、間接侵害の認定には一方の当事者による直接侵害の証拠が必要であると規定していた。このアカマイ事件では、CAFCは、BMC事件における直接侵害の要件は過度に制限されていると判示した。

誘導の立証のために原告は直接侵害の証拠を示さなければならないが、直接侵害は異なる当事者の組み合わせによっても構成されうる、と述べた。

この複数の実行者による直接侵害の立証に加えて、誘導侵害を立証するために、特許権者はさらに、侵害被疑者が方法特許の知識を持ち、他者が特許を直接侵害することをほう助したことを示さなければならない。

この見解の裏付けとして、CAFCは、特許法の立法経緯を分析し、犯罪を知りながらほう助したならば、それが部分的なものであったとしても、犯罪全体に対して責任を負うものであるという、犯罪ほう助および制定法の教唆の誘導を類推した。

地方裁判所はこの新たに明瞭化されたテストを採用していなかったので、CAFCはアカマイ事件およびマッケッソン事件を再審理のために地方裁判所へ差し戻した。

11名のうち5名の判事は大法廷の多数派判決に反対意見を述べた。反対意見の一つに、反対している判事のうち4名はBMC事件における誘導侵害の基準は維持されるべきであると主張した。

この判事達は、多数派の意見は最高裁判例に反するものであり、特許法の侵害に関する制定法を事実上書き換えるものであると主張した。

別の反対意見としてニューマン判事は前述の両方の意見に反対し、両者の意見は分割された侵害の争点を解決していないと述べた。ニューマン判事の見解では、複数の当事者が一斉に侵害行為をしていた場合、直接侵害の責任を負うべきであるが、誘導侵害の責任は直接侵害の責任が認定されることを要件とすべきであるとした。

CAFCは、誘導侵害事件の損害額の適切な基準に関するいくつかの争点、および、直接侵害が2つの独立した企業体が一斉に侵害行為をしたことによる直接侵害が起こりうるか否かについては保留したが、アカマイ事件は複数の行為者の状況における誘導侵害の新たな基準を設定した。

重要なことは、一名による方法クレームの直接侵害が無い場合であっても、特許権者は方法クレームを侵害することを知りながら侵害をほう助したとき、このほう助者を誘導侵害として、責任を追及できることである。従って特許権者は、侵害を誘導した者が、(1)他者による特許の実施をほう助し、(2)ほう助することが侵害を誘導することを知りながら行ったことを立証しなければならない。

大法廷において意見が割れたことを考慮すると、最高裁がこれらの事件を考慮することになるかもしれない。しかし当面は、企業は判例の変化と自社の製品やサービスへの影響に注意すべきである。

Key Point?この事件においてCAFCの大法廷は、特許クレームのすべてを実施しない場合でも、結果的には全体として方法クレームが実施されるときは、一部を実施するものが方法クレームの誘導侵害として、特許権侵害の責任を負う可能性があるという新たな基準を提示した。?大法廷でも意見が割れたこの事件は最高裁の判断を仰ぐ可能性があり、今後の判決の動向に注目すべきである。