CAFC判決

CAFC判決

ActiveVideo Networks, Inc. 対 Verizon Communications, Inc. 事件

Nos. 2011-1538, 2011-1567, 2012-1129, -1201,2012,11,24-Aug-12

この事件では、差止命令を下す上での4つの要因|(1)回復不能な損害、(2)法律による救済が十分であるか、(3)差止を認める場合と認めない場合との間の困窮度のバランス、及び(4)差止を認めることによる公益|を特許権者が立証しなければならないことが再確認されました。

アクティブビデオ(ActiveVideo Networks, Inc.)対ベライゾン(Verizon Communications, Inc.)の事件で、CAFCは、地方裁判所によるクレーム解釈及び侵害の略式判決を破棄した。

アクティブビデオは、ベライゾンのビデオ・オン・デマンド(VOD)サービスがアクティブビデオの3つの特許を侵害したと主張して、ベライゾンに対する訴訟を提起した。

これらの特許は、(1)データのリモート処理センター、(2)処理センターからの情報サービスを表示するホームコントローラ、および(3)これら2つの間の通信ネットワークを含むシステムに関するものである。

ベライゾンは反訴し、インタラクティブ・テレビの分野でアクティブビデオがベライゾンの2つの特許を侵害したと主張した。

3週間に亘る公判の後、陪審員は、両者が相手方の特許を侵害したと判断した。両者に対して損害賠償請求が認められ、地方裁判所はベライゾンのVODサービスに対して終局的差止命令を発行した。両者は控訴した。

各特許について、CAFCは、陪審評決を支持する実質的な証拠が存在するか否かを判断する際、1つのクレーム文言を分析した。ベライゾンが争った文言の1つは、「情報サービス」である。

クレーム解釈の審理の間には、両者は解釈について合意したものの、ベライゾンは、「情報サービス」が「ネットワークにより生成されたもの」を意味しなければならないと主張した。

しかし、CAFCは同意せず、専門家の宣誓証言による実質的な証拠は、その文言がそのようには限定されないと判断した。

ベライゾンはまた、ネットワークを介して伝送するためにエンコードされ圧縮されるMPEGファイルが「テレビ情報信号」を充足しないとも主張した。ここでも、CAFCはベライゾンの救済を拒否し、その根拠として明細書を指摘した。

しかしながら、CAFCは、プロセスコントローラが顧客毎に1つずつ割り当てられてはいないことを理由に、1つの特許の「個別に割り当て可能なプロセッサ」という要件をベライゾンが充足していないと判断した。CAFCは、この点に関して事件を差し戻した。

アクティブビデオに対して申し立てられた特許に関しては、議論は「重畳する(superimposing)」及び「静止ビデオ画像(still video image)」という文言の解釈に関係していた。

CAFCはアクティブビデオの主張を却下し、アクティブビデオが提案する解釈は特許に含まれていない限定を加えようと試みるものであると判示した。

地方裁判所において、ベライゾンは、アクティブビデオがその製品に特許を表示していなかったことを理由に、3つの特許のうちの2つについて訴訟提起以前の賠償額を抑えることに成功した。

製品に特許番号を表示することにより、公衆に対して特許成立が通知された状態になり、特許権者は、訴訟提起の6年前まで遡って過去の損害賠償を請求することができる。

特許製品表示を怠ると、実際に通知するまでは損害賠償請求権が発生しない。これらの一般原則にも関わらず、CAFCはこの事件において、特許表示要件に対する重要な例外を再確認した。それは、方法クレームしか持たない特許を実施する製品については、その製品に特許を表示する必要は無いというものである。

従って、CAFCは、3番目の特許は方法クレームしか含まないため、この特許を表示する必要は無いと判示した。

最後に、アクティブビデオ事件では、地方裁判所が下した終局的差止命令に対するベライゾンの控訴について検討した。裁判所が終局的差止命令を課すためには、(1)回復不可能な損害、(2)法律による救済が十分であるか、(3)差止を認める場合と認めない場合との間の困窮度のバランス、及び(4)差止を認めることによる公益という、4つの要因を考慮する。地方裁判所は4要因全てについてアクティブビデオの勝ちであると判断したが、CAFCはこれを覆し、4要因のうちの少なくとも3つは差止を支持するものではないと判断した。

第一に、CAFCは、回復不可能な損害の分析に弁護士費用を含めることは法的に誤りであると述べた。CAFCは更に、アクティブビデオのライセンシーであるケーブルビジョン(Cablevision)がマーケットシェアを失ったことがベライゾンの侵害によるものであるということは、アクティブビデオにとっては金銭的な損害に過ぎないので、回復不可能な損害には該当しないと述べた。

第二に、CAFCは、ロイヤリティは算定可能であり、ロイヤリティが侵害の救済として適切であると判断した。

第三に、困窮度のバランスに関しては、CAFCは、ベライゾンのような大企業に対する差止は、小企業であるアクティブビデオの年間売上の約70%にもなるであろうロイヤリティを認めることに比べて、圧倒的に過酷であると述べた。

最後にCAFCは、差止命令は特許事件において自動的に発令されはしないものの、公益が差止命令によっては害されないと判断したことは明らかに誤っているわけではないと通告した。

アクティブビデオ事件は、幾つかの重要な概念を強化した。第一に、好適な実施形態または明細書外からクレーム解釈に限定を持ち込もうとする試みは、成功する可能性が低いということである。

第二に、製品に特許の表示がされていないことが損害賠償の範囲を制限する機会をもたらす可能性があることを侵害被疑者に気付かせるものである。ただし、これは方法クレーム特許には該当しない。

最後に、この事件は、特許訴訟において差止命令は自動的な救済ではなく、特許権者は伝統的な4要因テストの下で差止を正当化する証拠を提示しなければならないということを再確認させた。

Key Point?この事件では、差止命令を下す上での4つの要因 ― (1)回復不能な損害、(2)法律による救済が十分であるか、(3)差止を認める場合と認めない場合との間の困窮度のバランス、及び(4)差止を認めることによる公益 ― を特許権者が立証しなければならないことが再確認された。