CAFC判決

CAFC判決

Absolute Software, Inc. 対 Stealth Signal, Inc.事件

Nos. 2010-1503, 1504,2011,12,11-Oct-11

この事件では、重要事実に関する真正な争点が存在しない場合のみ略式判決が適切であることが確認されました。また、提案された期日までに異議を申し立てないことは、自身の異議を申し立てる権利を放棄したことと見なされ、放棄規則の限定的な例外は適用されないことに注意が必要です。

二つの競合ソフトウェア企業であるアブソルート(Absolute)とステルス(Stealth)は、紛失あるいは盗難にあったノートパソコンを追跡するために設計されたお互いの競合製品に対してソフトウェア特許を行使した。アブソルートの製品は「Computrace」と呼ばれ、ステルスの製品は「XTool Tracker」と呼ばれている。当事者は、テキサス州南部において非侵害の略式判決が認められたことと、特定のクレーム解釈について争うため交差上訴した。

アブソルートの特許権は、紛失あるいは盗難にあったノートパソコンや携帯電話などの電子機器をインターネットなどのグローバルネットワークを介して検索する方法とシステムに関する。その発明は、ソフトウェアが電子機器上にダウンロードされることを必要とする。ソフトウェアは、電子機器を追跡するホストシステムに対して、保護されている電子機器の特定と位置に関する情報を通信するためにインターネットを使用する。

アブソルートが行使したクレームの各々は、「前記電子機器と前記ホストシステム間の通信を可能にするために使用される一つ以上のグローバルネットワーク通信リンクを前記ホストシステムに提供する」との限定を含む。アブソルートの特許のうちのひとつは、窃盗犯からの検出をかわすことができるコンピュータセキュリティ監視システムをクレームしている。重要なことには、そのシステムはコンピュータの「可視または可聴ユーザインターフェースに信号を送ることなく、ホスト監視システムと通信するため」のソフトウェアを組み込んでいる。

地方裁判所は、「通信リンク」との文言を、ノードあるいはルータのIPアドレスそのものとしてよりはむしろ、インターネット上での二つの「ノード」(そのうちのひとつは電子機器自体であってもよい)間の接続として解釈した。上訴審において、特別補助裁判官が提示した期日までに異議を申し立てなかったことで、アブソルートはその解釈に対して異議を申し立てる権利を放棄したとCAFCは認定した。CAFCは、放棄規則の限定的例外(例えば、実質的正義の利害が問題となっている、等)のいずれもこの事件には当てはまらないと言及した。

しかしながら、アブソルートは、ステルスのXTool Trackerが二つのIPアドレスを提供するか否かに関する事実の争点が存在することを理由に、地方裁判所が非侵害の略式判決を認めたことは不適切であったとした上訴の第二の理由においては成功を収めた。

ステルスの専門家は、XToolは監視される機器のIPアドレスを提供すると証言したが、ホストのIPアドレスを同様には提供しないことについて特に証言しなかった。アブソルートの専門家もまた、XToolがソフトウェアとホストのIPアドレスの双方を提供することを積極的に主張しなかった。

地方裁判所が被申立当事者に有利な合理的推定を導くことができなかったので、CAFCは略式判決の認定を無効とした。CAFCはまた、コンピュータの「可視または可聴ユーザインターフェースに信号を送ることなく、ホスト監視システムと通信するため」のソフトウェアを記述しているクレームに対する非侵害の略式判決も破棄とした。

ステルスが通信の終了直前にソフトウェアプログラムとホスト間のあらゆる通信の終わりに発生する可聴信号を付加したことは明白だった。

アブソルートは、全ての情報は可聴信号が始まる前に伝達されるので、その製品はクレームを侵害していると主張した。ステルスは否認した。従ってCAFCは、この係争は重要事実に関するものであり、不適切に略式判決が下されたと認定した。

ステルスの特許は概して、正式なライセンスなく複数のコンピュータにインストールされるソフトウェアの悪用を検出するために、中央監視サイトに密かに通報するソフトウェアを電子機器に埋め込むことにより、そのような電子機器を遠隔監視する発明を記載している。

いくつかのクレームは「準ランダムレートでメッセージパケットの送信を開始するための送信手段」の限定を含む。ステルスもまた、所有者がリースした専有ソフトウェアの使用を監視するための秘密の方法に関するクレームを有していた。これらのクレームは「固有の使用契約情報(例えば、ライセンス契約)を埋め込む」及び「前記ソフトウェアに埋め込まれた前記使用契約の前記条件を報告する」との限定を含んでいた。

CAFCは、Computraceが「準ランダムレート」の限定を満たすことをステルスが立証しなかったことを理由に、アブソルートに対する非侵害の略式判決の認定を支持し、繰り返される時間間隔のあいだにランダムに選択された時間に一度送信される文言について地方裁判所に同意した。

Computraceは前回の送信からちょうど24.5時間後に送信するので、非侵害の略式判決は適切であった。CAFCはまた、Computraceはライセンス契約のシリアル番号しか送らないことを理由に、「使用許諾」の「文言」を送信することを要件とするクレームに対する非侵害の略式判決の認定を支持した。

アブソルート・ソフトウエア判決は、重要事実についての真正な争点が存在しない場合に限り略式判決が適切であることへの注意喚起である。この事件において、当事者双方は、訴えられた製品が間違いなく関連するクレームのあらゆる限定を満たす、または間違いなく満たさないと証言することができたそれぞれの専門家を十分に活用する機会を逃した。

この事件は更に、放棄規則の厳格な性質を明らかにした。時宜にかなった、相反するクレーム解釈への異議は、裁判及び上訴審においてその解釈に異議を申し立てることを可能にする。

Key Point?この事件では、重要事実に関する真正な争点が存在しない場合のみ略式判決が適切であることが確認された。?また、提案された期日までに異議を申し立てないことは、自身の異議を申し立てる権利を放棄したことと見なされ、放棄規則の限定的な例外は適用されないことに注意が必要である。