CAFC判決

CAFC判決

Abitron Austria GmbH 対 Hetronic International, Inc. 事件

Supreme Court, No. 21-1043 (June 29, 2023)

この判決で最高裁は、米国商標法の侵害規定(ランハム法1114(1)(a)及び1125(a)(1))は域外適用を想定したものではないと認定した。

外国での販売行為に対する米国商標法の侵害規定の適用が争われた事件

原告のHetronicは、建設機械の無線リモートコントロール装置の米国メーカーで、黒色と黄色で識別力をもたせた米国登録商標“Hetronic”を付けて同社のリモコン装置を45カ国に輸出・販売していた。被告のAbitron Austria(本社オーストリア)はHetronic製品の外国販売代理店であったが、代理店契約を終了した後に自社製競合品の販売を主にヨーロッパで開始した。

原告は、被告の競合品がランハム(商標)法に違反するとしてオクラホマ西部地区地裁に提訴した。地裁は商標侵害を認定し、陪審は外国で販売された商品の商標侵害の賠償額として9600万ドルを評決した。事案は第10控訴裁に上訴され、控訴裁は、ランハム法が外国侵害品にも及ぶと判断した地裁判決を支持した。事案は連邦最高裁に上告され、最高裁は第10控訴裁の判決を下記の理由から破棄した。

連邦議会の立法に係る法案は、別段の意図が明白でない限り、合衆国の領土管轄権内でのみ適用されることを意図しているという長年の原則がある。

最高裁判例によれば、議会が制定した法律は特段の理由がない限り合衆国内で適用されることを想定されている。言い換えれば、国外での行為については外国法にその判断を任せればよく、国内法の域外適用は禁止されると推定されている。この推定を適用すると、二つのステップを踏まえた判断がなされる。第一のステップは、法律が域外適用を意図して制定されたものかどうかの確認である。次のステップは、裁判が、法律の国内適用と域外適用のどちらを求めるものかの確認である。法律が関心を持つ行為が国内で行われた場合には、その適用は国外行為の有無によって妨げられない。また、国外での行為があるだけで国内の行為がない場合には、その行為が域外適用の対象とならないことは自明である。