この判決で最高裁は、訴訟提起が侵害発見から3年間の請求期限内に行われているのであれば、3年以上前に発生した著作権侵害に対する損害賠償を請求できると判断した。
訴訟提起から3年以上前の著作権侵害に対する損害賠償の可否が争われた事件
著作権侵害に対する救済は「事由の発生後」(after the claim accrued) 3年以内に請求しなければならない(17 U. S. C. §507(b))。この場合、「発生」とは「侵害行為」の発生をさす(Petrella事件)。しかし、発見規則(discovery rule)によれば、それは原告が侵害行為を「発見」した時をさしている。そのため、発見の3年以上前に侵害が発生していたとしても、原告は侵害の救済を求めることができる。
Sherman Nealyは1983年、Tony Butlerと組んで音楽会社を興した。音楽会社は間もなく解散し、Nealyは麻薬保持・使用の罪で2回、刑務所に収監された。Nealyが収監されている間にかつての相方であったButlerは、Warner Cappellと契約を結んで音楽会社が発売した楽曲の使用権を許諾した。
2018年に釈放されたNealyは、Warner Cappellが10年前に著作権を侵害したとして地裁に訴え、侵害を「認識」したのが3年以内であるため、賠償請求が507条下で合法であると主張した。Warner Cappellは、Nealyの訴訟提起が合法であることは認めたものの、損害賠償の対象期間は訴訟提起から3年以内に制限されると主張した。地裁は、Warner Cappellの主張を支持したが、控訴審(第11巡回区控訴裁)で地裁判決が破棄されたため、事案は連邦最高裁に上告された。
最高裁は、損害賠償の対象となる期間は3年に制限されるわけではなく、訴訟提起がタイムリーに行われている限り、侵害がいつ発生したかに拘わらず著作権者は損害賠償を求めることができると判決した。最高裁はその理由を次のように説明した。著作権法が出訴期限を3年間に制限しており、その制限期間の起算日は発見規則により侵害が発見された時、又は発見すべきであった時である。それは損害賠償の対象となる侵害行為を3年に制限するものではない。著作権者は、その訴えがタイムリーに行われている限り、どんなに古い侵害行為であったとしても、損害賠償を求めることができる。
侵害の行為に気づくのは、その発生後である。判決は時効の起算点を損害に気づいた時点とした。