この事件でCAFCは、企業秘密の製造プロセスで製造された製品が、特許出願日の1年以上前に販売されていた場合、AIA後の特許法においてもオンセールバーが成立し、後日付与された製造プロセスに対する特許の無効理由となると判断した。
AIA改正後の特許法下でのオンセールバーの適用が争われた事件
控訴人のCelanese International Corporationとその関連会社は、人工甘味料の製造プロセスに関する特許(10,023,546、10,208,004及び10,590,095)を保有する。特許された製造プロセスは、特許出願日である2016年9月21日の1年以上前から欧州で企業秘密として使用されていた。また、その製造プロセスを使用して製造された人工甘味料を商品名Ace-Kとして2015年9月21日以前に米国で販売していた。
被控訴人のAnhui Jinhe Ind. Co.他が人口甘味料Ace-Kを米国に輸入したため、Celaneseは国際貿易委員会に提訴して、通商法337条によるAce-Kの輸入差止命令を求めた。Jinheは、ITCの337条審理でCelaneseのAce-K販売がオンセールバー(特許法102条(a)(1))を成立させるとして、337条の違反なしの決定を求めるモーションを提出した。ITCの予審判事(ALJ)はそのモーションを認めた。その理由は、秘密のプロセスで製造した製品であってもそれを販売すればオンセールバーが成立し、特許が無効となるためであった。ALJによる決定は、ITCの最終決定となった。CelaneseはITCの決定を不服としてCAFCに控訴した。
Celaneseは、AIA法の条文改正により、AIA法以前のオンセールバー判例は適用されないと主張した。CAFCはCelaneseの主張を退け、ITCの特許無効の決定を支持した。CAFCはその理由を次のように説明した。旧法下のオンセールバーは、特許権者が非公開の製造プロセスで製造した製品を販売した場合にも適用された。旧法下のこの原則を、AIA法は変更していない。Celaneseが企業秘密のプロセスで製造したAce-Kを2015年以前に販売していたという事実は、オンセールバーを生じさせるので、後日付与されたそのプロセスについての特許は無効である。