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月刊The Lawyers 2010年10月号(第132回)

3. Gregory w. Baran 対
Medical device Technologies, Inc.事件

No. 2010-1058 (August 12, 2010)

- クレームの解釈、ミーンズ・プラス・ファンクションの解釈 -

この事件においてCAFCは、米国特許第5,025,797号(以下、797特許)及び第5,400,798(以下、798特許)に関する特許権侵害事件に関し、被告であるMedical Device Technologies, Inc.及び他社(合わせて以下、MDテク)の主張を認めたオハイオ州北部地方裁判所の判決を支持した。

両特許は自動化された生体組織検査器具に関するものである。裁判の争点となった器具は、固定された探り針とその探り針の上をスライドする格納式カニューレからなる生体組織検査針を含んでいた。生体組織標本を得るためには、まずカニューレを「採取」位置に引いておき、探り針を患者の体内に挿入し、その後カニューレを開放する。標本を採取するために、ばねがカニューレを探り針の上方に送り出す。

クレームされた器具は、カニューレが装填された外側のガイドを引くことによって標本を採取する。レバーは、ガイドを所定位置にロックし、ばねが探り針の上方に送り出すように開放することができる。MDテクの器具(Bio Pince)は、スライダー・クランク・メカニズムを用いて標本を採取する。

バラン博士は、MDテクが、798特許のクレーム2の一部である「(中略)前記カニューレから取り外し可能な探り針(stylet means)」という部分を実施していると主張した。

地方裁判所は、「取り外し可能な」という文言を、「探り針を紛失もしくは損傷することなくカニューレから取り外す、もしくは引き抜くことが可能である」と解釈した。

裁判所は、使い捨ておよび再利用可能な器具の実施例が明細書に記述されていたが、再利用可能な種類だけが、探り針を「取り外し可能な状態にはめ込まれた」ものと記述していたと認定した。反対に、使い捨て器具の実施例は、針を「接着接合されている」と記述していた。

クレーム2は部分的に、「第一の接続手段に対し開放可能かつ固定可能にはめ込まれる第二の接続手段を備えた前記生体組織検査アクチュエーターであり、第一の接続手段と第二の接続手段は、生体組織標本を取得する間、1つのユニットとして動作可能である」と記述していた。

地方裁判所は、明細書がその機構を「取り外し可能に装着されている」と記述していたので、「開放可能な」とは「紛失もしくは損傷することなく取り外す」ことを意味している、と同様に解釈した。バラン博士は、このクレーム解釈に照らすと、798特許の特許権を侵害していることを立証することはできない、と自白していた。

797特許を考慮して、地方裁判所は、BioPinceの装置が(標本の)採取メカニズムに関して2つの限定要件を満たしていなかったことから、特許権非侵害の略式判決を下した。

クレーム7は「(中略)コイルばねの力とは反対方向にガイドを採取位置に移動させる手動操作可能な採取部材と、ガイドを採取位置に残す開放手段からなる生体組織検査器具」と一部記載されている。地方裁判所は、複数の部品が連続した一連の動作ではなく、揃って作動するのであれば、この部材(member)という文言は、その複数の部品を包含する、と判断した。さらに、BioPinceのスライダー・クランク・メカニズムの部品は、カニューレに採取するために揃って動かないので、797特許の特許権を侵害していない、と判断した。

こうして裁判所は、BioPinceの装置が「ガイドを採取位置に残す開放手段」を具備していないと結論付け、ガイドを採取位置に保持する機能と、採取位置からガイドを解放する機能の2つによるミーンズ・プラス・ファンクションの限定として解釈した。

地方裁判所は、BioPinceのクランクアームとロッキングタブがこれらの機能を果たすと認定したが、クランクアームとロッキングタブは797特許の明細書に開示されたレバー機構とは実質的に異なるので特許権を侵害していない、と結論付けた。

控訴審において、バラン博士は、「紛失もしくは損傷することなく」という文言は、使い捨て器具の実施例をクレームから除外するものであることから、「取り外し可能な」と「開放可能な」という文言は「紛失もしくは損傷することなく」という文言によって限定されるべきではないと主張し、地方裁判所のクレーム解釈に反対した。

CAFCは地方裁判所と同様、特許明細書中の再利用可能な器具と使い捨て器具に関する実施例の記述の相違点に着目し、再利用可能な器具の実施例における「取り外し可能に装着されている」という文言の用法と、使い捨て器具の実施例における「接着接合した」という文言の用法とを比較し、「接着接合した」部品は「取り外し可能」ではないことを、この文言は認めるものである、とした地方裁判所の解釈に同意した。

CAFCも、その特許が「開放可能な」と「取り外し可能な」を交互に用いており、特許クレームが明細書に開示された個々の実施例をカバーするように解釈される必要がなかったことを認めた。

CAFCが地方裁判所のクレーム解釈に同意したことにより、バラン博士が798特許の特許権を非侵害と自白したことは有効となった。

バラン博士は797特許に関する略式判決に対しても控訴した。CAFCは797特許の明細書に開示された構成とBioPinceの構成は実質的に異なり、したがってBioPinceの装置は特許権を侵害していない、とした地方裁判所の判決を支持した。

この判決のポイント

この事件は、特許クレームが明細書中に開示された全実施例よりも狭義に解釈されうること、また、特許クレームの解釈における明細書の文言の重要性を示した事件である。また、ミーンズ・プラス・ファンクションクレームと侵害被疑品と対比判断におけるCAFCの審理手法の一例を示している。

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