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月刊The Lawyers 2010年10月号(第132回)

1. Golden Hour Data Systems, Inc. 対
emsCharts, Inc. and Softtech, LLC事件

Nos. 2009-1306-1396 (August 9, 2010)

- 発行日のない刊行物とIDS(情報開示) -

この事件でCAFCは米国特許番号第6,117,073(以下、073特許)に係る特許権を共同侵害してはいないというテキサス州東部地区地方裁判所の判決を支持したが、地方裁判所による不公正行為の判断を取り消し、審理を地裁に差し戻した。

「統合緊急医療輸送データベースシステム」という名称のゴールデンアワー(Golden Hour)の073特許に係る特許発明は緊急医療輸送に関連する情報管理サービスのためのコンピュータシステム及び方法を対象にした発明である。この特許発明は、緊急医療チームの派遣、彼らの動きの追跡、医療処置の管理及び施されたサービスに対する患者への請求処理を統合することによって、記録管理における非効率性及び非正確性を回避することを目的としている。

侵害被疑者である被告のemsチャーツ(emsCharts)は患者情報を記録して統合請求書を提供するプログラムを製造している。ソフトテック(Softtech)のソフトウェアは患者の救出及び搬送のようなフライト情報を調整し、フライトを記録するものである。

ソフトテックとemsチャーツは提携を結び、彼らのプログラムを協働可能にした。ゴールデンアワーはemsチャーツ及びソフトテックに対する訴状をテキサス州の東部地区において提出し、073特許の一部のクレームに係る特許権を侵害するとしてemsチャーツを訴えるとともに、他のクレームに係る特許権を共同侵害しているとしてemsチャーツとソフトテックの両方を訴えた。

陪審はemsチャーツの侵害は故意であると判断してゴールデンアワーに有利な評決を出し、ゴールデンアワーへの350万ドルの賠償を命じた。地方裁判所は、共同侵害については成立しないという法律問題としての判決(JMOL)を下した。

そして、地方裁判所は不公正行為に関する非陪審審理を開いた。この審理では、ゴールデンアワーのCEOであり、073特許についての発明者であるドクター・ケビン・ハットンが、クレームした発明に最も近いと判断したエアロメッド・システムを記載したカタログに焦点を当てた。

カタログには、医療カルテモジュール及び請求書作成モジュールに結合された派遣モジュールを有するエアロメッド・システムが記載されていた。カタログにはまた、システムがフライト派遣プログラムとともに用いられうることも記載されていた。

カタログは特許出願の5ヶ月後に提出された情報開示供述書(IDS)の対象であったが、出願人はカタログ内に記載された統合請求システムを開示しなかったため、カタログそのものは米国特許庁(以下、PTO)に提出されなかった。被告は、代理人がこの情報を審査官に故意に開示しなかったことは不公正行為に相当すると主張した。

地方裁判所は、請求書作成システムに関して開示を怠った情報は「極めて重要である」であると判断した。地方裁判所は、073特許に係る特許発明の特徴は請求書作成システムの統合であり、カタログ内の情報はIDSに矛盾し、開示されなかったカタログの部分は「特許性の重大な障害になっていただろう」と判断した。

地方裁判所は、ゴールデンアワーがカタログそのものを非開示にしてカタログの内容を選択的に開示したことは、PTOを欺く意図を証明するものだと判断した。欺く意図の証拠と情報のハイレベルな重要性との均衡をとって、地方裁判所は不公正行為により特許権は行使不能であると結論付けた。

控訴審において、ゴールデンアワーは地方裁判所が重要性及び意図に関して事実認定を誤ったと主張した。ゴールデンアワーは、カタログが日付を有していないため、米国特許規則1.98により審査官が考慮すべき対象から除外されると主張した。

しかしながら、CAFCは、IDS内の情報が、審査官により検討される先行技術でなければならないという要件は存在しないことを示すMPEPに、この主張が矛盾すると判断した。CAFCはまた、先行技術の基準を満たさない情報でも重要となりうると判断した複数の事件を引用した。

CAFCは、PTOへ提供されなかったカタログ内の情報は高度に重要であるという地方裁判所の認定を支持した。

まず、CAFCは、カタログは十分に先行技術を構成していると判断した。また、分別ある審査官であれば、カタログの先行技術としての状況を調べるだろうと述べた。次に、CAFCは、カタログが出願人のPTOに対する説明と矛盾するため、カタログは重要であると判断した。

例えば、ゴールデンアワーは出願審査の際にエアロメッドが請求システムとの包括的な統合を提供しないということを主張したが、この主張はカタログに直接的に矛盾する。統合請求システムが本発明の特許性の鍵となるものと仮定すると、出願人の主張と矛盾する情報は、分別ある審査官にとって重要であっただろう。

次にCAFCは、不公正行為の意図に関する要件について検討した。裁判所は、出願代理人であるマイケル・フラーがカタログに記載されていない情報をPTOへ提供しなかったことについて何も説明しなかったと判断した。

日付を有していない資料を提出しないことは慣例であったとフラーは説明したものの、フラーは、自身が所属する法律事務所の他の弁護士はこのような情報を提出しており、PTOがその提出された情報を考慮していたことを知っていたと認めた。

CAFCによれば、重要な争点はフラーまたはハットンがカタログを読んだかどうかであった。CAFCは異なる結果を生じる2つの可能性を提示した。1つ目はフラー及びハットンがカタログを読んでおらず、彼らが内部の情報を開示しなかったことはせいぜい重過失であったということである。2つ目の可能性は彼らがカタログを読んでおり、故意に情報を開示しなかったということである。

CAFCは、重過失は不公正行為でないと言及し、ハットンまたはフラーがカタログ内部の内容に気付いていたかどうかについて地方裁判所は判断していないと判定した。そして、CAFCは不公正行為であるという判断を取り消し、カタログ内部をハットンまたはフラーが読んでいたかどうかまたは不利な情報をPTOに提供しないことを故意に決定したかどうかの詳細な事実認定を行うように地方裁判所へ事件を差し戻した。

また、CAFCは共同侵害に関するJMOLの判決を支持し、複数当事者の組み合わされた行為がプロセス・クレームの特許権を侵害すると申し立てられた場合に、すべての工程が1人の当事者に帰結するようにこの当事者がプロセス全体にわたって支配または指示を発揮しなければならないと説明した。陪審がこのような支配または指示を推測する十分な証拠が存在しない点についてCAFCは地方裁判所に同意した。

ニューマン判事は、控訴審において立証責任を負う当事者によって欺く意図が立証されなかった場合に、この当事者に別の機会を提供するために事件を差し戻すべきではないという反対意見を示し、日付を有していないカタログは特許性について高度に重要であることに反対した。

ニューマン判事はまた、この事件の争点が、係属中の大法廷事件であるTherasense, Inc. 対 Becton, Dickinson & Co.事件(以下、セラセンス事件)(Nos. 2008-1511,-1512,-1513,-1514,-1595)に影響を及ぼすかもしれないので、この控訴審は、大法廷の公判が終結するまで延期されるべきであると述べた。

最後に、ニューマン判事は、emsチャーツとソフトテックとの間の戦略的提携の証拠に基づいて、分別ある陪審員ならば侵害を認定できただろうと述べて、共同侵害に関する地方裁判所によるJMOLの判決を、多数派が支持したことに反対した。

この事件は、重要性と意図という2つの要件を含む不公正行為を検討する際において、地方裁判所の事実認定がいかに重要であるかを示している。ニューマン判事の反対意見は、この法律分野に関するセラセンス事件に係るCAFCの大法廷事件に及ぼす可能性のある影響を浮き彫りにした。セラセンス事件の口頭弁論は2010年11月9日に予定されている。

この判決のポイント

この判決により、発行日の日付を有しない文献であってもIDS上、特許性について重要となりうることが確認された。日付を有しない文献を米国特許庁へ故意に提供しなかったことの事実認定が不十分であったため、CAFCは事件を地方裁判所に差し戻した。日付を有しない文献であっても特許性に影響を与えると考えられる場合にはIDSにより提出しておくべきであると思われる。

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