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月刊The Lawyers 2010年8月号(第130回)

2. Orion IP, LLC 対 Hyundai Motor America事件

No. 2009-1130 (May 17, 2010)

- カタログに記載された発明に基づいて特許の有効性を判断した事件 -

この事件の争点は、原告であるオリオン(Orion IP, LLC)が所有する米国特許第5,367,627号(以下、627特許)の有効性及び実施可能性である。「コンピュータ支援部品販売方法」というタイトルで、コンピュータ化したシステムを使用して、販売員が顧客の希望する部品を選択することを支援する方法をクレームしている。

627特許は、顧客がある部品をリクエストすると、販売員が電子システムを用いて適切な部品を検索し、その在庫及び価格を確認し、その情報を顧客に提供する発明である。

この事件は、オリオンが、ヒュンダイ及び他20社の自動車メーカーのオンライン販売システム(例えば hyundaiusa.com 及び hyundaidealer.com)が627特許および更に他の特許も侵害したと主張し、同社を提訴した後で生じた事件である。

陪審員はヒュンダイが627特許を故意に侵害し、627特許は有効であると判断したが、ヒュンダイは問題となっている他の特許を侵害していないと認定した。結果として、裁判所は判決前利息、判決後利息、及び判決後の販売に対する継続的な2%の特許権使用料について議論し、陪審員はオリオンに支払う賠償額として3400万ドルを裁定した。

地方裁判所はヒュンダイの法律問題としての判決(以下JMOL)及び新たな裁判の申し立てを却下し、最終判決の登録を指示した。

CAFCは、地方裁判所によるJMOLの却下を最初から審理し、第5巡回裁判所法(第5巡回裁判所はこの地方裁判所の所在地の巡回裁判所である)に基づき、「分別ある陪審員ならば反対の評決に至ることができないと裁判所が結論付けるほど、事実と推定のポイントが余りに強力に圧倒的に一方の当事者寄りではなかったかどうか」について考察した。

JMOLにおいて、ヒュンダイは、陪審員に提示された証拠は、電子部品カタログであるIDN2000システムを販売している「電子部品カタログ」という名称の先行技術のパンフレットによって、627特許の新規性がないことを立証している、と主張した。

地方裁判所がそのカタログが、627特許に対して公知文献である否かを判断する前に、そのパンフレットが先行技術として適切か否かをまず判断しなければならない。そのパンフレットに関心を持つ人、あるいは関連する分野の当業者が、少なくとも特許出願日の1年以上前に、そのカタログにアクセスすることが可能であったならば、そのパンフレットは特許法第102条(b)に基づく刊行物としての先行技術である。

この事件の事実に基づくと、パンフレットは地方裁判所が判断した基準日である1988年11月10日以前に発行されていたならば、先行技術となりうる。オリオンは控訴審において、そのパンフレットは1987年に最初に発行されたが、その1991年の改訂版は先行技術とはならないと主張した。

CAFCは、基準日以前に、自動車部品のビジネスにおいて、そのパンフレットは合理的にアクセス可能であったと認定して、この主張を拒絶した。証拠は、そのパンフレットの目的が、(1)ダイレクトメールで製品の関心を引くこと、及び(2)そのシステムをカーデーィーラーに実演することの2つの要素から構成されていた。証拠はさらに、カタログが1987年からそのような目的に使用されていたことも示していた。

CAFCは次に、先行技術がクレームされた発明を開示していたかどうかの評価を行った。両当事者は、先行技術のパンフレットに記載された電子部品カタログが、627特許の個々の要素を含んでいたか否か、特に、顧客へ「提案」をしていたか否かを争った。

クレーム1のステップ(d)は、「集められた部品に関連する情報を受け取り、部品に関する情報を顧客の要求に合った提案にまとめる」ことをクレームしていた。

地方裁判所はこの「提案」を、「潜在的な顧客へ伝達されることを意図した情報」として解釈した。裁判においてヒュンダイは、パンフレット内に記述された電子部品カタログが、販売員が部品関連情報を直接顧客に伝える用途であったことを証明するために、専門家証言、第三者による事実証人、及び証拠書類の形式による大量の証拠を提示した。

この大量の証拠には、販売員及び顧客の両者がカタログ内の部品を確認していたことを示しているパンフレットの部分だけでなく、電子部品カタログ内にある情報が、直接顧客に提示されていたという証言も含まれていた。オリオンは反対の証拠を提示しなかった。

CAFCは、この情報は、カタログが627特許のクレーム1及び従属クレーム7、8を十分に開示していると判断し、パンフレットはレンタル価格を含む他の関連する部品関連情報を顧客へ伝達することを教示していたことから、オリオンのパンフレットに記載のシステムが小売価格に加えて卸売価格を表示することを理由に、カタログに記載されていたシステムとは異なるシステムをパンフレットが記述していたという主張を拒絶した。

クレーム7は「価格情報」という更なる要素を追加しており、「価格情報」が卸売価格から小売価格への利幅を明らかにすることを要件としていることを理由に「顧客への伝達を意図」していたか否かについて両当事者は争った。

CAFCは、クレームはどのような種類の情報が顧客に伝達されるべきかを特定していないことから、クレームは先行されており、また、卸売顧客は卸売価格に関心があり、そして、販売員は小売客には小売価格だけを伝えるほうが有利であることに気付いていると断定した。

さらにCAFCは、「図形情報」を要件とする従属項8が、適切なイラストを選択し、販売員と顧客両者に見える方法で情報を表示することを記述した先行技術のシステムの工程によって先行されていたか否かを審理した。

CAFCは、分別ある事実認定者であれば、カタログがクレームの発明を公知のものとすると認定するような、IDB2000システムが顧客に対し価格および図形情報を含む提案をしていたという明白かつ説得力ある証拠をヒュンダイが提示していたことを理由に、JMOLは適切であったと判断した。

ヒュンダイは同時に、明瞭にして説得的な証拠によって立証できなかった(1)重要事実の積極的な虚偽表示、重要情報の非開示、あるいは誤った重要情報の提出、及び(2)米国特許商標庁を騙す意図に対する地方裁判の決定に対して控訴した。

ヒュンダイは、発明者が基準日以前に発明を公に使用し、発明をライセンスしたことから特許は権利行使不能であると主張した。

CAFCは、特許権者が主張した発明の公用及びライセンスの時点で、発明が実施されたという証拠が何も無かったことから、ヒュンダイが提供した証拠の重要性を地方裁判所が否定したことは、明らかな誤りではなかったと判示した。

更にCAFCは、発明者が発明を公にした行為は、不正行為の意図を推定するものではないと判断した地方裁判所の認定も明らかな誤りではなかったと判断した。なぜならば、意図は有罪行為を示すことを要件とするからである。

ここで、地方裁判所は、その発明はライセンスの時点でまだ実施されていなかったことを理由に、基準日以前に発明の公用または販売がなかったという発明者の説明は真実であったと判決した。

オリオン事件において、CAFCは、テキサス州東地区に実体がない企業によって提訴された事件における、JMOLの拒絶を覆す可能性、および賠償額の算定を示した。さらに、CAFCは、先行技術のシステムを記述するパンフレットの開示を補強するために口頭の証言を採用した。

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