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月刊The Lawyers 2010年7月号(第129回)

2. ALZA Corp 対
Andrx Pharmaceuticals, LLC事件

No. 2009-1350 (April 26, 2010)

- 明細書の記載内容が実施可能要件を満足するか否かを判断した事件 -

アルザの事件は、米国特許第6,919,373号(373特許)に関係している。その請求項1は、長期間に亘って放出速度が徐々に増加するメチルフェニデート(「MPH」)の薬物剤形を通じて先天性の注意欠陥多動性障害(「ADHD」)を治療する方法をクレームしている。

ALZA Corporation及びMcNeill-PPC, Inc(まとめて、「ALZA」)は、クレーム発明の実施品であるConcerta(登録商標)を製造している。また、ALZAの競合企業であるAndrx Pharaceuticals, LLC及びAndrx Corporation(まとめて、「Andrx」)は、Concerta(登録商標)と同様に持続的に放出する内側コア(sustained-release inner core)の周囲の外側に放出する(immediate-release)(「IR」)コーティングを有する製品を製造している。

ALZAは、373特許を侵害しているとしてAndrxを訴えた。Andrxは、自身の製品が特許を侵害しているということを否定し、373特許が自明であり実施可能要件を満足していないということを理由に373特許が無効であるとする積極的抗弁を行った。

裁判官による裁判に従い、地方裁判所は、373特許は侵害されておらず争点の請求項は自明ではないと判断した。加えて、地方裁判所は、浸透性及び非浸透性両方の剤形をクレームする争点の請求項の全範囲を明細書が実施可能にはしていないということを理由に、373特許の争点の請求項は実施可能要件を欠いており無効であると結論付けた。

In re Wands(注1)において言及された要素(factors)を適用するに際して、地方裁判所は、クレームされたような非浸透性の経口剤形を開発するには相当な実験が必要であると認定した。それゆえ、地方裁判所は、争点の請求項は実施可能ではないので無効であると判断した。

ALZAはCAFCに控訴し、争点の請求項は実施可能要件を欠いており無効であるという地方裁判所の認定は誤りであると主張した。争点は、「当業者が出願時に相当な実験をせずに徐々に増加する放出速度を持つ非浸透性の経口剤形(即ち、錠剤及びカプセル)を創り出すこと」を明細書が十分に実施可能にしているか否かである。

CAFCは、徐々に増加する放出速度を持つ非浸透性の経口剤形の実施可能要件を欠いており争点の請求項は無効であるとした地方裁判所の結論は妥当であると考えた。

CAFCは、米国特許法第112条第1パラグラフに規定されている実施可能要件について論じることから始め、Genenetch Inc. 対 Novo Nordisk A/S (注2) における判例を引用した。この判例は、「特許明細書が当業者に対して、『相当な実験』をせずともクレーム発明の全範囲を実施して使用するにはどうすればよいか、を教示しなければならない」ことを要求するものである。

次に、CAFCは、開示が相当な実験を要求するか否かを判断するために、Wandsにおいて言及された要素について論じた。その要素とは、(1)実験の量、(2)提示された方向付け又はガイダンスの量、(3)実施例の存否、(4)発明の性質、(5)先行技術の状態、(6)当業者の相対的技量、(7)技術の予見の可否、(8)請求項の広さ、である。

CAFCは、Wandsの8要素のうちの7つが、請求項の全範囲を実施可能にするために相当な実験を要求していると判断した地方裁判所の認定を支持した。

更に、373特許の明細書が浸透性の剤形を説明するのみでありクレームされているような非浸透性の剤形を生成することについて当業者に十分なガイダンスを提供していないということについて、地方裁判所に同意した。そしてCAFCは、当業者の知識が実施可能要件を満足するというALZAの主張を棄却した。

CAFCは、Auto. Tech. Int'l, Inc. 対 BMW of N. Am., Inc. (注3) における自身の判例を引用して、当技術分野において良く知られていることについては明細書で開示する必要はないというルールは「補足のルールに過ぎず、基本的な実施可能化の開示に代わるものではない」と主張した。

それゆえ、CAFCは、ALZAに対し明細書中での適切な実施可能化の開示を要求し、ALZAは明細書中で欠如している知識の代替として当業者の知識に依拠することができないと考えた。

次にALZAは、373特許の明細書は当業者がクレームされた剤形を生成して使用することを可能にしていると主張した。ALZAは、非浸透性について言及して種々の非浸透性の持続的に放出する剤形を生成して使用するにはどうすればよいかを論じている教科書を参照している明細書中の10行分の記載に依拠した。

CAFCは、明細書は単に「更なる研究についての方向付け」を提供しているに過ぎず、米国特許法第112条第1パラグラフで要求されるような「徐々に増加する放出速度を持つ非浸透性の経口形を当業者が生成して使用することを可能にする十分、明確、簡潔、厳密な文言」を提供してはいないと述べて、この議論を棄却した。

それゆえ、CAFCは「実施可能要件の問題を解決することは、徐々に増加する放出速度を持つ非浸透性の経口剤形を生成するために相当な実験が必要であるか否かに関する根本的な事実認定に依存する」とした地方裁判所に同意した。

従って、CAFCは、徐々に増加する放出速度を持つ非浸透性の経口剤形を開発するために当業者が相当な実験を行う必要があったとする、地方裁判所の認定には明確な誤りが存在しないと認定した。

ALZAの専門家証言は、地方裁判所が適用した当技術分野の技術水準よりも高い技術水準に依拠しているために、必要な実験はルーチンワークに過ぎないということを立証できなかった。また、CAFCは、非浸透性の剤形の準備はルーチンワークではないとした他の専門家証言に地方裁判所が依拠したことには明確な誤りが存在しないと認定した。

それゆえ、CAFCは、373特許明細書では、当業者に徐々に増加する放出速度を持つ非浸透性の経口剤形を生成し使用させることができないことを証明する「明確且つ説得力のある証拠」を認定し、その結果、争点の請求項は実施可能要件を満足していないと認定した。

ALZAの事件は、特許の開示において全請求項の対象を当業者が実施することを可能にする十分な情報を提供することの重要性を強調しているという点で、重要である。また、本件は、当業者の基本的な知識は適切な実施可能化の開示の代替としては不十分であるということを確認した。


(注1) 858 F. 2d 731, 735 (Fed. Cir. 1988)

(注2) 108 F. 3d 1361, 1365 (Fed. Cir. 1997)

(注3) 501 F. 3d 1274, 1281 (Fed. Cir. 2007)

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